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□my dear....
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遠くから響く教会の鐘の音。
貴方がその鐘の音の意味を呟き、私に提案をする。
僕達も挙げようか、と。
途端に私は顔に熱が集まるのを感じ、つい口から出るのは本音ではない言葉。

その言葉達を笑いながら全部否定していく貴方。
まるで貴方は私の全てを知っているかのように。

しかしそれは当然で。

何故なら私の全てが貴方だから。


ずっと傍にいて、ずっと愛してきて、永遠に貴方の傍に居ると契約をした。

その契約印は数年前に消えてしまい、貴方は復讐を終えた筈だった。

それなのに貴方はまた私を傍に置きたいと、犠牲にする為に右目を抉り出そうとした。

必死に止めたのを覚えている。

犠牲なんて無くても私は御傍に居たいと、居られるのだと言うと、貴方はその蒼い瞳を輝かせて喜んだ。


私は契約で縛られなくなった関係に酷く不安を感じていた。
命令されずに自由に動ける、その反面貴方が私を自由に捨てる事もできるという事。

でもそれは杞憂だった。
貴方は昔から変わらず私を契約していた頃と同じように扱う。
たまに命令をしたり、我が儘を言ってみたり。

貴方の一言一言に私は翻弄され魅了される。
本当に魅力的なお方。



嗚呼、この胸は落ち着く。
少し屈んで貴方の胸に耳をつけて心音を聴いていると、これが止まらないよう祈る。
神でもない。
貴方に祈る。
どうか、止めないで。


どうか、私を御傍に…



貴方に頂いた私の名を呼ぶ貴方の声に顔を上げると、きつくきつく、抱き締められた。
潰れそうなくらいに、きつく。


耳元で囁くテノールの声。
愛を囁く貴方の声。


熱い何かが私の目から流れてきて、胸も顔も全てが熱く、抱き締められているのとは違う苦しさ。


貴方に満たされて満たされて満たされて
溢れてしまった。
涙になって溢れてしまった。


貴方の傍に居られるのは私だけだと、貴方が仰って私はもう壊れてしまいそうに幸せ。




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