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□Pinch!
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最悪だ……………
「君も男にしておくには勿体無いくらい美しい…!」
「…勿体無いお言葉、恐縮です。」
「ほら、ご覧?眼鏡を外した君はさながら羽化したての蝶のように可憐で初々しい…!」
「ちちち近……………」
最 悪 だ!!何でコイツが、家に居るんだ!
全身に鳥肌を立てている執事に眼鏡を握り締めて床に沈没しているメイド。
と、椅子に座って隠すことなく怒りを露わにしている僕。
ドルイット子爵この変態女たらしが!
「ところで、ファントムハイヴ伯爵。」
「ヒィイッな、何だっ!?」
女性相手なら確実にオとせる大層な顔面を間近で見てジョワッと鳥肌が立った。
残念ながら僕は男だ。
反射的に後退りをする。
「まさか私の可愛い駒鳥が貴方だったなんてね…」
「人違い…じゃ…」
「私が麗しいレディのお顔を間違えるなんて有り得ませんよ。」
ギャーーッ!
だから近付くなって!
セバスチャンに助けを求めようとしたが、壁際で「鳥肌が一つ鳥肌が二つ…」と数えていて気味が悪かった。マズい、自分の身は自分で守れという事か!?
プラチナブロンドの髪が鼻に触れてくしゃみが出そうになる。
うわ、睫毛バッサバサ。
じゃなくてだな…
「僕は見ての通り、男なんだが?」
「構いません。私はあの日出逢った駒鳥をずっと探していた。その為だけに何度も夜会を開いたというのに、私の駒鳥は現れなかった。」
憂いをおびた顔に、ドン引きしていた僕は悪いことをしたな…と色んな意味で可哀想に思った。
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