短編(^^)
□理想パラノイア
2ページ/3ページ
*****
街は何やら不穏な空気が流れています。
歌舞伎町で事件があったらしい。
怖いなぁ…巻き込まれないように気をつけなきゃ。
そう思っていたら、今日は橋の上であの人を見掛けた。
今度は眼鏡の男の子が隣にいた。
その子は何故か泣きじゃくっていて、少し曇った顔をしたあの人がそれを宥めていた。
そしてそのまま、肩を並べて何処かへ行ってしまった。
…もしかしてあの人、男の子にも手を出すのかしら?
信じたくないけど、もしそうだったら…
――…だけど仕事は頑張らなくちゃ。
今日は帯の修繕をしなきゃなの。
眼(まなこ)を赤くしてでも、
たとえ彼が男色家だったとしても、
鋏を片手に持ちまして、
私は今日も仕事に精を出します。
****
街は何やら騒ぎ始めました。
どうやら再び事件があったらしい。
早く犯人捕まらないかしら?
今日は大江戸スーパーでお買い物。
そこでまたあの人を見つけた。
今日は、まだ年端もいかないチャイナ服の女の子と一緒。
一緒にお菓子コーナーを見てる。
「銀チャン!私コレがいいアル!」
「ったく…それだけだかんなー」
「キャッホーイ!」
そんな会話が耳に入る。
そんな小さな女の子にお菓子なんか買い与えて、
一体何をしようというの?
貴方って、本当に見境がないのね。
――…だけど、仕事は頑張らなくちゃ。
今日も仕立ての仕事がたくさんあるの。
…あら?
鋏の色、“こんな”だったかしら?
まぁいいか。
今日も仕事をがんばりましょう。