短編(^^)

□理想パラノイア
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私は江戸で着物の仕立屋を営んでます。



父と母が早くに他界して、一人娘の私が店を継ぐことになったのです。







「まだ若いのに大変だねぇ」


と、近所の人達は何かと私を気遣ってくれて、お陰で大変ながら楽しい生活をしてます。








だけど、私には唯一の悩み事があるんです。

それは、大好きなあの人の浮気性。



私という者がいるのに、この家に帰ってきやしない。







本当は心配で心配で胸が張り裂けそうだけど、仕事を頑張らなくちゃ。




これは母の形見の裁縫鋏。


研げば研ぐ程、よく切れるんです。











****





今日も江戸の街はいつもの通り。

なんて穏やかで平和な日常なんだろう。








こんな日には散歩に限る。


そう思って大通りを歩いていたら、あの人を見つけた。






…彼の隣には、桃色の着物が良く似合う綺麗な女が寄り添って歩いていたけど。















どうして




どうして












仲睦まじいその姿は、私にとっては苦痛以外の何物でもなくて。




走ってその場を去りました。











――…だけど仕事は頑張らなきゃ。




どんなに辛くても、

頬を涙で濡らしても、



鋏を片手に持ちまして、


私は今日も仕事に精を出します。

 
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