夢話
□夢の後に
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「あれ?式始まる前なのに泣いてない?」
抱きしめていた手を離し、後ろを向いて俯く顔を覗き込むようにからかう。
「だ、誰のせいだと思って…!びっくりしたんだからね」
涙目になって怒っても、ちっとも怖くない。
むしろすごく可愛いから厄介だ。
「はいはい、ごめんなさい」
少し重いドレスを引きずって立ち上がると、正面から背中に腕を回す。
服に化粧が付いちゃうから、あまり密着出来ないけれど。
「もう…いっつもそうやってごまかすんだから」
そう言いながらも、そっと肩を抱いてくれる。
優しさはあの頃と少しも変わっていない。
お互い会話もなく、ただ温もりだけを確かめる。
確かにそこに相手がいることを。
「僕が責任を持って幸せにするよ」
ふと彼の口から滑り落ちた言葉が、私に降り注ぐ。
「…」
「大好きなお姉さまにはなれなかったけど、幸せな旦那さんになれたんだからね」
そんなことを言う顔を確認したいけど、今の自分を見られたくなくて。
お姉さまとの思い出が一時のはかなく美しい夢ならば。
きっとこれから待っているあなたとの未来は、永く幸せな愛のかたち。
》あとがき