LAGNALOK Syndrome

□真王&恵編
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もう死のう…生きていたって仕方がない。ナイフをどこに突き立てたら死ねるかな?そう考えていると声がした。
「やめたほうがいいよ。」
「えっ…」
「それ、痛いよ。血も出るし。」
そう言って彼女は私の手からナイフを奪って自らの左手首を切った。
「ほらね。」
そう言って彼女は切った手首を見せた。白い手首に一筋、赤い線が出来ていた。
「大…丈夫?」
「どう答えたらあんたは死のうとしない?」
えっ…まさかそんな事を言われるなんて思ってなかった。
「何…がしたいの…?」
「別に。たいした意味がある訳じゃない。何と無くだよ。」
悪びれもせずに彼女は言うから、私はむっ、として言い返した。
「だったら余計なことしないで。ナイフ返してよっ!」
「やだ。」
「何でよ!」
すると彼女は私を止まらせる程の身勝手なことを言った。
「死ぬなら勝手に死ねばいい。でもあたしに関わった以上、あたしの眼の前で誰も殺したくない。」
「意味わかんない…」
私は笑ってしまった。
そしたら彼女はそんな私を見てふっ、と笑った。
不覚にも私は彼女がそうやって笑うのを綺麗だと思ってしまった。
「そうやって笑える位なら暫くは平気だろ?辛くなったらあたしを切ればいい。」
「えっ…」
彼女は今なんて言った?
『ワタシヲ切レバイイ』
彼女は今、本当にそう言った?
私の聞き間違えじゃない?
「本当…に?」
「ああ。辛くなったらあんた自身じゃなくて、あたしを切ればいい。」
「でも…どうして…」
彼女は死ぬ気なのだろうか?私には死ぬなと言っておいて…
「どうして?う〜ん…あんたは多分、自分だったら躊躇いなく殺せる気がしたから。でも、一回止めたあたしを殺すことはきっと出来ない。だからと言って、他の関係ない人間や、あんたを傷付けた人間ならきっと、あんたは躊躇いなく殺せる。だからかな?」
「そんな証拠もない確信で私に貴女を切れと?貴女を殺すかも知れないのに?」
私がそう言うと彼女は不敵に笑って言った。
「大丈夫、あんたはあたしを絶対殺せない。」
その言葉は何故か私を安堵させた。
私が少し、本当に彼女を傷付けていいのか迷っていたら、彼女は
「じゃあね、辛くなったら屋上に来ればいい。」
そう言って私の前から姿を消した。まだ、彼女の名前…知らないのに…
彼女の手首を切ったナイフは鈍い光を放っていた。その光を見ながら私は今日会った彼女との事を考えていた。

彼女は一体何だったんだろう?今日のことは全部夢で明日になったら全部なくなってたらどうしよう?
一体彼女は何がしたかったんだろう?
どうして私を助けたんだろう?
助けた?
彼女が勝手に自分の手首を切っただけじゃない…
でも、救われた…
明日笑い話になって学校中に回ってたらどうしよう。
彼女が皆に言い触らしていたら…
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