*日常の国のアリス

□◇お茶会にて(アリス×帽子屋)
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「…ズズッ」
アリスは琥珀色の液体を一口飲む。…美味しい。今日はアッサムか…
ここに通うようになってからアリスはスッカリ紅茶に詳しくなった。
「紅茶…美味しいね帽子屋」
アリスがニッコリと笑いながら、正面に座る帽子屋に話しかける。
『あ、当たり前だろ!?
俺が淹れたんだから!!』
ネムリンのためにせっせとスコーンにジャム&クリームチーズを塗りながら帽子屋が怒鳴る。
そんな当たり前のこと聞くなよ、ったく…とか帽子屋がブツブツつぶやいているのが聞こえる。
「……照れなくてもいいのに」
『ばっ照れてなんかねぇよ!!』
「そう?でもこんな美味しい紅茶なかなか淹れられないと思うわ」

アリスがツンツンと紅茶に浮かぶレモンを突っつきながら返す。
『…昨…日…に…時間…程予…行練習…し…てた…から…ね…』
ムニャムニャと答えたのはネムリン。サラリと帽子屋が隠したい裏の努力をバラす。 
「2時間も!?」
『ネムリンっ!?』
アリスと帽子屋の声が重なる。同時に帽子屋はガタンッと立ち上がった。
『ち、違!…今のは』
帽子屋がオロオロと腕を振り回したため紅茶がこぼれ、サンドイッチの山が崩れた。
…残念ながら見えないが
きっと耳まで赤くなって
いるに違いない。
ふふ…可愛いなぁ…
いかにも愛しいものでも
見るかのようなアリスの慈悲深い眼差しにいたたまれなくなった帽子屋は益々喚き散らす。すると…
グサッ
『痛ーっ!!』 
突如悲鳴をあげる帽子屋。彼の右手にはフォークがプッスリ刺さっている。
『ネムリン?』
『…行儀…悪…い…よ?……帽…子屋』
ネムリンがモゾモゾとつぶやき、そのまま帽子屋の手を口に運ぶ。
『痛ぇ!!ネムリン!お菓子はこっちだってば!!』
帽子屋が慌ててスコーンの皿を引き寄せる。

…ネムリン…わざとだろうか?
「………コクン」
考え込みながら紅茶を頂くアリス。カップに添えられた華奢な薬指には針というか棘?で突いた様な小さな小さな傷があった…。

…場面は変わって、と言っても和やかに進むお茶会のすぐ隣だが…
『………』
白バラと対峙する一匹の猫。
ピリピリピリ
お茶会の空気とは一変して一触即発の空気である。
『……引き抜くよ?』
低くつぶやくチェシャ猫。
その耳にアリスの楽しげな笑い声は届いていなかった。

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