*日常の国のアリス

□◆猫の爪切り(アリス×猫)
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最近…アリスは考える。
チェシャ猫って…猫だよね?
今日は(首切り)城に遊びにきている。女王様と優雅にお茶を頂き今は城の庭園でのんびりと談笑しているところだ。
城の内部に造られた庭園。ココにくるまでには例の廊下も通り過ぎたが、もちろん素通りした。…やはり生首は目に優しくない。
…気を取り直して
女王様お気に入りのこの場所はバラを初めとし大小様々な花々が咲き乱れアリスにとってもお気に入りの場所の一つである。
花々の甘い香りは女の子であるアリスにとってとても好ましいものなのだ。
花はいいなぁ…
アリスは思う。
甘くって…可憐で…
こぅ、血とか喧騒とか…
そういったモノとは無関係
って感じで…
「…」
白バラって例外があったが。
その頃、いつもなら片時もアリスから離れないチェシャ猫は女王がいつもの鎌を所持していない事を確認した後、彼女たちとは随分離れた
場所に腰を下ろしていた。
…やっぱり女王様苦手なのかな?
私から見れば、喧嘩友達もしくは良きライバルって感じなんだけど…
チェシャ猫はそんなアリスの思想は露知らず…悠々自適に毛繕いを始めた。
ジャリジャリ
そんな音が赤い舌が覗く口元からは聞こえてきそうだ。右手の甲を丁寧に丁寧に舐め上げていく。
ジャリジャリ…ジャリ
ふと視線を感じたのか、チェシャ猫が中途半端に舌を出したまま顔を上げた。
「………」
見つめるアリスと目が合った…ようだ。
目…フードに隠れて見えないけど。
『どうしたんだいアリス?』
「…別に」
…やっぱり猫か。
毛繕いしてるし…。 
『?…アリスも毛繕いして
欲しいのかい?』
「!!ち、違うよ!
ぁ…いいっ!!本当に
いらない!!」
スクッと立ち上がりかけたチェシャ猫をアリスは必死に押し留める。
『そう?』
チェシャ猫は残念そうに座り込んだ。…チロリ…と仕舞い忘れた舌を覗かせたまま。
「………ふぅ」
…危なかった。
もう…何で猫の毛繕いって舐めるのかしら?
溜息をつきながらチェシャ猫を見やるとアリスの拒絶に気を悪くした様子もなく再び毛繕いを再開している。
「………」
そんなアリスの様子を横で見ていた女王はおもむろにアリスに声をかけた。
『私たちのアリス…
どうかしまして?』
「え?」
『…何か考え込んでいる様に見えましてよ?』
女王の可憐な瞳に見つめられてアリスは思わず顔を赤める。
「…え…ぃや…あの…チェシャ猫って本当に猫なのかなぁって今更思っちゃって」
照れた様に笑いながらアリスが答える。
それを聞いた女王の両眼がスゥと細められた。
スクッと女王が立ち上がりワンテンポ遅れてピンクのドレスがそれに続く。フワリ…と
「…女王様?」
女王はアリスの両手を優しくとると顔を近づけ囁いた。
『…アリス…貴方に
見て頂きたいモノがあるの』
「見て頂きたいモノ?」
アリスは?マークを浮かべながら首を傾げる。
『えぇ。だから何も聞かず私と一緒にいらして?』
懇願するような女王の様子。アリスはちょっと悩んだが女王の真剣な様子に心を決めた。
(…本当は女王が珍しく鎌を持っていなかったことが大きかったのだが…)
「うん、いいよ女王様!」
『まぁ…ありがとうアリス!!』
女王は感激したように瞳を煌めかせる。
立ち上がった2人を見て、すかさずチェシャ猫が声を掛けた。
『どこに行くんだいアリス?』
聞き方がアリス限定だ。
「んー…ちょっとね」
女王がチェシャ猫には言うなとアリスに囁いたのだ。
『…僕も行くよ』
「…ぁ…いい!遠慮しとくよ。すぐ戻るから…だからチェシャ猫は待ってて!!」
アリスに止められてチェシャ猫はちょっぴり不服そうだ。
『でも…』
「待ってて!!ねっ?」
有無を言わさないアリス。
アリスにここまで言われたらいくらチェシャ猫でも引き下がるしかない。
いつものにんまり顔にむぅ…と不満を漂せながら庭園を後にする2人を見送るチェシャ猫。
だったが
女王に釘を刺す事だけは忘れない。   
『…首狂い…アリスの首を
刈るのはおよしよ』
『!?お黙り!猫!!
お前に言われなくとも
分かってますわ!!』
……あぁ…
やっぱり仲悪いのかも。
一人思ったアリスだった。

こうして庭園を出た2人。その後女王はアリスを城のあちこちに連れて行き、あるモノを見せたのだ。
それは実に様々な所に…
ヒトが気付きにくい所をわざわざ狙うかの様にあった。
「………」
『ね?アリス。これで分かったでしょう?』
女王の口調に怒りが滲んでいる事を静かに感じたアリスは『アルコト』を心に決めた。
「…何とかしないとね」

…やがて庭園に戻っていく2人………その2人が去った場所…豪華な廊下の片隅にソレはあった。優雅な装飾に似つかわしくないソレはどこぞの猫が豪快に爪を研いだ後。縦に走る何本もの傷跡にはよく見ると小さな小さな爪の破片が刺さったままだ。その痛々しい傷跡の真下に転がる小さな毛玉…猫が吐き出した灰色のソレは明らかに城の主を挑発する意味を秘めていた。

「…」
真っ直ぐに前を向くアリス。その瞳には確かな決意を
込めて。

ここにアリスによって『チェシャ猫爪切り計画』が始動された事をチャシャ猫本人は勿論知るよしもなかった。
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