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「うわ、なにそれ」
ぬくぬくしたこたつに入りほっと一息。ふと正面にいた要を見ると、手にはなんともいえないオレンジ色の塊。そんな彼の前には蜜柑の皮。そこから推測するに、彼の手にあるのは蜜柑…のはず。なぜそんな姿に。
「大福かと思ったよ」
「あ?」
「大福。なんだってそんなにつるつるにしちゃったわけ?」
蜜柑(と思われる物体)は、すっかり様変わりしていて白いふさふさの部分がまったく無い。
「なんでって、まずいからだよ。この方がうめーだろ」
「えー。めんどくさくない?」
「別に。まあここまで剥くのに30分かかったけどな」
「なぜ誇らしげ。白いとこ栄養あるのにもったいないね」
皮の上にまとまった白い筋をじーっと見てみる。蜜柑についている時はそれなりに美味しそうだが、今はなんとも、不味そうだ。いや、こうしたのは要だ。
「じゃ、お前食うか?」
「やだ」
「じゃ、こっち」
「ん」
蜜柑を一粒差し出してくる要に、素直に口を開けた。ポン、と放り込まれたそれを咀嚼。
「……ぬるい」
「美味いか」
「30分も人肌で温めてるから」
「いいんじゃね?体が温まって」
「そういう問題じゃないと思うー」
(寒い冬にはこたつと蜜柑とそれからあなた)