ゴスアリストーリー

□ゴスアリ第四章
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消えかけていたはずの記憶のカケラ達がもとの形に戻ろうとかすり合わさって
奏でられる
鈍い音の旋律

頭の中を駆け巡る

僕は痛くて頭を抑えた。



顔は覚えていない
けど言葉は覚えてる
言葉だけは、突き刺さったまま抜けないままだから



『生まれなきゃ、生まれてこなきゃよかったのに』

『死んじゃうかも』

『お前なんかいらない』

大丈夫、師匠はまだ…

「…師匠は」



言葉を発して顔をあげると、ひらひらと宙に紙が舞っていた。

地図が描いてあった。



彼は街を見下ろせる野原に僕と真っ白な紙をおいて、「さよなら」も言わずに、その場から姿を消したのだ。








「酷いわイっちゃん」

残りの紅茶を一気に飲み干してミっちゃんさんは目を細めた。
それに対する師匠の反応は、反省するような感じもなく、楽しそうに笑っている。

「えーいい人じゃん俺ータダで居場所(お店)をあげたんだから」

カチンときた。僕があの後どれだけ不安だったか知らないんだこの人は。

初対面にも関わらず近所の人達が優しく接してくれなかったら僕きっと今頃店も開かずに引きこもりになってた。

「ねーミっちゃんさん、師匠の怪我が治り次第に僕が師匠を一発殴る権利ありますよね」

「あーあるな」

ミっちゃんさんも同意見らしい。よしこれで2対1!僕有利!!これで師匠も少しは
ひるんで…

「今殴ってもいいけど?殴れるなら」

…ない。

師匠が口角を吊り上げた。自信に満ちた表情をする彼に、隙は全くない。

「…ミっちゃんさん、師匠抑えててくれません?」

「無理や。イっちゃんの瞬発力ってチーター並やから」

「兎なのに!?」
「せやで、兎なんに!」


「ミっちゃんが遅いだけじゃないかな。年なんじゃない?」

「違う!俺を作った奴がおじさん好きな奴やっただけや!!」


「…」

「あ、ぁあでもミっちゃんさんてその、ちょい悪系な感じですよね」
「え、ほんまにー?」
「え、えぇ」
「本当はただのアホ」


「え、そうなんですか」
それが本当なのか試すために師匠に質問してみる。するとミっちゃんさんが急に慌て出して言った。

「弟子くん、引っかかったらあかん!これは罠や!!ほんまは俺、やればできる子なんや!」


「え、あ…えええと」

ごめんなさいミっちゃんさん、ふぉろーできません。

「ね、アホでしょ?」

「それは褒め言葉じゃないんですね」
「当たり前。ところで話戻すけどーどうする?俺を殴る?」


へらへらと笑いだす師匠
それに呆れた僕が、溜息を漏らした瞬間

瞬きをしたら見逃してしまいそうな速さで
誰かが師匠を思いっきり殴り飛ばした。
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