ゴスアリストーリー

□ゴスアリ第三章
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「お別れ、してきた?」

「はい」



ネズミくんに簡単で美味しい料理のレシピ帳と、通帳を渡して、僕は最低限の荷物を持って店を出た。
すると、まだ約束の10分前だというのに
もう師匠が店の扉の横にある木の下にいて僕は驚く。



「じゃ、行こうか」


足を進める彼の脚を見ると
師匠の脚はまだあのままだ。


「師匠、脚」



僕は足を止めて、せめて包帯を巻き付けなけて固定しなければと店の中に引き返そうとした。だが、師匠はひょこひょこと片足で飛び跳ねてきて、僕の腕を引っ張った。



離してくださいと言っても師匠は聞かず、首を横に振る。



「師匠」
「今から行く所に、これを治せる友人がいるんだ。早く行くよ」

「え、ああ師匠待ってください」



足が崩れることなどどうでもいいのだろうか。師匠の進む一歩はとても大きい。
僕は少しでも師匠の歩く速度を落とすため、会話を持ちだした。


「師匠、今から行く所って何処なんですか」

「友人の家」

「どんな方なんですか」

「とっても面白い奴等…あーでもあいつ等今何処にいんだろ。確認とるの忘れてたからちょっと待ってね?」

「はい」

足を止めて彼は携帯電話らしき物を胸ポケットから取り出すと何処かに電話をかけ始めた。

あいつ等…不思議の国のアリスではイカレ帽子屋の茶飲み仲間は三月ウサギと眠りネズミだ。やっぱりそのモデルのドールなのか、けど

会ったことのないドールにはいつもワクワクする。本物とどう違うのか、どこが違うのかが気になるからだ。
僕はこっそりと耳を澄ました。



「アローアロー?こちらイカレ帽子屋さん。応答せよ応答せよー」

「…」



『はいはいこちら茶会族でーす!どうしたん?』


「今からそっち行くけど、今何処いるの?上?下?」

『上やで』

「了解」



「上だって」


「上?」


師匠が空を指さす。


相手が誰であるのかもわからない会話だったが内容もよく解らなかった。
上とか下とか、何でしょう




理解できずにポカンとなる僕に対し、師匠は辺りを見渡して周りに人がいないことを確認すると僕の帽子を取った。


「師匠っ!」

「これからその場所にワープする。大きい帽子は飛ばされるかもしれないから預かる」
「は、はい」


師匠は昔から変な能力を僕に見せていたからワープという言葉を聞いて僕は驚きはしなかった。でもワープという言葉を聞いて、まさか上って上空のことだろうかとはっとする。



「師匠もしかして」
「口は閉じて目はつむってて。良いって言うまで開けちゃダメ」

「…はい。」



僕は師匠が嫌いだ。


いう通りにしなければならないことに少し
不満を感じながらも、これにはしっかり理由があるのだと唇を緩く噛み締める。


「はいはい…嫌いで結構。じゃあそのまんまー

















une…
















deux…






















trois…









「…」
「…」




…何語!?






パチン!



指を鳴らす音が耳に響いた。

ポンポンと肩を叩かれる







「…フランス語。目、開けていいよ」





僕はゆっくりと




目を開ける











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