ゴスアリストーリー
□ゴスアリ第一章
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「…」
「…」
ネズミがもうこれ以上開かないというぐらいに口を開けている。
まさかこの外見でとは誰も思わないだろうからな。
当然の反応、のはずだが帽子屋はいつもと変わらない素振りで、私の珈琲豆を挽いていた。
「帽子屋、なぜ驚かない」
素の私は、今まで誰にも見せたことがないのに
何故そんなに平然としていられる?
鋭い視線を帽子屋に送っていると、帽子屋は少し考えるようにして
答えた。
「んー、だって
゙あの女王様の娘゙ですからねぇ、おまけにあの女王様の溺愛っぷり、いつしかアリス様の性格が歪んで腹黒くなることなんて
お見通しでしたよ」
ね?
ニコリと笑う帽子屋。
私はそれにどうしようもなく苛立った。
「お前な、どこまで私を驚かせれば気がすむのだ」
「ふふ、その方が楽しいじゃないですか」
「…」
やられた、さすが
不思議帽子屋だ。
***
不思議帽子屋に初めて会ったのはこの店の開店時
店のドアの前に立ちすくんで何やら悩んでいた彼に、私が声をかけたのが始まりだった
「そこで何をしている」
「最近店を建てたのですが、お客様がなかなかいらっしゃらなくて」
「お前…名は?」
「不思議帽子屋です」
「イカレ帽子屋ではないのか?」
「いいえ、不思議帽子屋です」
「…」
「…すみません、困らせてしまいましたか」
「いや。そうだなお前のそのスタイルからすると」
帽子屋というよりも
喫茶店のマスターの方が似合いそうだ。」