庭球夢

□エイプリルフール
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「…すまん、別れてくれ」


『……ぇ…?』


「…すまん」


『えっ…仁王?』


「…他に好きな奴ができたき」





突然仁王が私のクラスに来たかと思えば、そんな別れ話。


他に好きな子ができたんだって。





『…へぇ…分かった……分かったよ』





視界はこれ以上ないくらいにぼやけて歪んでいて、


今瞬きでもしようものなら、まぶたの裏の涙は溢れてしまうだろう。





『…今までありがと』





仁王とすれ違いざまにそう言って、


行く宛もないのに校舎の階段を上った。



涙は止まることを知らずに、やりたい放題で頬を伝う。




少し冷静になって前を見てみると、そこには大きな鉄の扉。


どうやら知らないうちに階段を2つも上がって、屋上へ来たらしい。


試しに屋上のドアノブを回してみたけれど、


普通は屋上の扉なんて開いていないものだ。





『…仁王の馬鹿!!!!』





この苛立ちをどうにかしてほしくて大声で怒鳴ってみたものの、


むしろ逆効果だったようで、反響した自分の声でまた嗚咽する。



鉄の扉に背中を預けたらするすると力が抜けて、


そのまま床に体育座りをする格好になった。





「…阿呆やのう」


『………っ!!』





うずめていた顔を上げると、すぐ目の前で私を見下ろしている銀髪。





『…来ないで…っ』


「おまんもまだまだやのう」


『……何が』


「………」





私が上目遣い―――というか半ば睨むと、


仁王はふぅーっ、とため息をつく。





「今日は何月何日じゃ」


『…何、それ』


「いいから答えんしゃい」


『………4月ついた……ち……』





え、まさか。


という一言に尽きる。


まさかね。いくら仁王でも別れ話が嘘なんてそんなねぇ!





「…気づいたようじゃの」





ニヤリと口の端で笑って、銀髪は言う。





『……エイプリルフール…でしたっけねぇ』


「こんくらいのペテンも見抜けんようじゃ、まだまだじゃ」


『んなもんペテンでもなんでもないわあぁぁぁ!!!!』





怒りのままにバッと立ち上がった。





『………この…クソバカ仁王――――――――!!!!』





もっと酷い言葉を思いつくだけ言いたかったけれど。


こういうときってあんまり思い浮かばないものらしい。





『人でなし!!死●!!二度とその顔あたしに見せるなぁ―――っ!!』


「お‥おまんの俺への愛が伝わったき」


『喰らえ愛のムチじゃああああああああああああああああああ!!』


「う゛っ…」





(お前なんか<ピ->で<ピ->して<ピ->してしまえぇ!!)(女がそんな言葉遣いしたらいかんぜよ‥)







今日はエイプリルフ−ルですね!
もう嘘はつきましたか?

ワタシはつきましたよ!←
期待どおりのリアクションをしてもらいました笑


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