REBORN

□静寂と甘い口づけ
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応接室には、僕とディーノだけ。
僕は書類に目を通してサインをする作業の繰り返し。
ディーノはそんな僕をただみつめてる。
聞こえるのはお互いの呼吸音だけ。
そんな無言の空間。

人は、二人きりになって、無言な状態になると気まずくなり、どうにか話題を作ろうとするって、前に読んだ本に書いてあったけど…僕の場合は違うみたい。

ディーノと二人きりの空間で、どっちも話さない事なんか今までに何回もあったけど、不安になったり気まずくなったりした事なんかない。
寧ろ…そう。安心すらしたりする。

ディーノから向けられる視線は、敵意なんか欠片もなく、優しくて、僕の全てを包み込むような穏やかなもので、決して嫌ではない。顔を見なくても、僕を愛しいと思ってるのがわかる。
そんなディーノを、愛しいと思う僕がいる訳で。
きっと、僕がこんな気持ちになるのは、後にも先にもディーノだけだと思うんだ。

「なぁ恭弥、そろそろ休憩にしねぇか?」
ふいに、ディーノが話しかけてきた。
目線だけ向けると、柔らかな金色の髪が太陽の光りに反射していた。
「…そうだね。ちょっと待ってて」
書き途中の一枚を書き終えて、ディーノの膝の上に、ディーノの顔が見えるように座った。
ディーノが、この方が好きなんだって。
最初は恥ずかしかったけど、今はもう二人きりの時はだいたいこの体制が多くなってる。
「ん―。恭弥シャンプーの匂いがする」
僕の身体は、一般的に見ても華奢らしくって、ディーノの腕の中にすっぽり収まってしまう。
「貴方は、甘い匂いがするね…」
綺麗な鳶色の瞳。吸い込まれてしまいそうなのに、目を反らせない。
「嫌いか?」
「んーん。好き」
静かなのも好きだけど、ディーノと話すのも好き。
甘いテノールの声が耳に届くと、無駄な力が身体から抜けていく。
ディーノの、全部が愛しい。
大好き。愛している。まだ言い足りないけど、あんまりたくさん言うと、本質を見失っちゃうでしょ?
だから、僕は言うのを我慢できなくなった時と、大事な時にしか言わないって決めてるんだ。
「恭弥、好きなのは甘い匂いだけ?」

嗚呼ディーノ、なんて意地悪な質問なんだろう。
わかってるくせに。
いつも言わないからってそんな質問する事ないじゃない!
せめてもの仕返しに、ディーノのオデコにキスを送る。
ディーノの驚いた顔って、とっても可愛い。僕だけが知ってる事。
「全部。全部大好き。当たり前でしょ?」

さあ早く、キスをあげたんだ。お返しは勿論、愛の言葉と甘いキスだよね?
目を閉じると、落ちてくる甘い唇。

そして貴方は母国語で言うんだ。
「Ti.amo…恭弥」




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