Sitto



「仕方ないだろう。ならばお前も一緒にくればいいじゃないか。」
「それは…嫌っス…」
「あまり、困らせるな…」

柳さんを呆れさせてしまった。

軽くためいきをついて、ぽんと俺の頭をノートで叩いて、何も言わずに去っていってしまった。

だって悔しくて、悲しくて、なんだか腹立たしくさえあって、柳さんを好きなだけなのにどうしてこんな気持ちになるのかわからなくて、ただ自分が真黒になってしまいそうで怖かったんだ。柳さんが、幸村部長や真田副部長や仁王先輩や…先輩たちばかりを優先するから…。
明日はせっかくの休みだから二人で遊びたいと言ったら、明日は先輩たちで勉強会をするとか言われてあっさりと断られてしまった。

俺だけ二年生だから…嫌な先生の話も、勉強の話もなんにもわからなくてつまんないんだ…それに柳さんの隣に自分以外の誰かがいるのを見るのが苦しい。自分以外の誰かと俺の知らない話で笑っている柳さんを見るのが辛い。
ぼんやりと窓際で校舎の外を眺めていると突然後ろから肩を組まれた。

「赤也じゃねーの、こんなところで何してんの?」
「なんだ丸井先輩っスか…」
「なんだよ、それ。なんかあったのか?」
「別になんもないっスよ。」
「何にもないような顔してねーじゃねーか。ま、何があったか知らねーけど、ほらこれやるから食って元気出せ。」

ポケットからごそごそと飴やガムやクッキーを取り出して俺のポケットにねじ込んでくれた。丸井先輩のこういうノリはなんだか安心する。

「いいっスね…丸井先輩は悩みなさそうで…」
「なんだとぉ?生意気言いやがって!こうしてやるッ」

丸井先輩が俺の肩に乗せていた腕を首まで回してぐっと締めてきた。苦しいんですけど…。でもじゃれ合うのが楽しくて自然に笑みが零れる。

「おい。」

…柳さんの声がした。気のせいかな。だってさっき呆れて自分の教室へ帰ってしまったのにまたここに居るはずがない。

「お、柳じゃん?」

丸井先輩の腕がゆるくなって、いるはずのない人の名前を呼ぶものだから俺もその声のしたほうに振り返る。

「赤也に用事か?」
「ああ、ちょっと借りる。」

いつもと変わらない表情の柳さんに手首を強く掴まれてぐいぐいと引っ張られる。丸井先輩の方をちらと見るとガムを膨らませながらひらひらと手を振っている。

「柳さん?どこ行くんすか?」

ぎりぎりと掴まれた手首が痛い。後姿だけど柳さんが怒っているのがわかる。こんなときにさえ、後姿にさえ、ときめいてしまう自分が悔しい。そして問いかけには答えて貰えないまま、部室の裏の奥まった場所まで来ると急にぱっと手を離して柳さんが俺を振り返る。その瞳は薄く開かれて突き刺すような眼差しが見える。何も言わないまま今度は両方の手首を掴まれて、建物の壁に押し付けられた。

「…んッ」

俺の意思なんか関係ないという様な乱暴なキス。喉の奥まで届くくらいに舌を差し込まれて口内を犯される。いつもは優しく触れてくれるその唇が、荒々しく俺の唇を貪っていく。苦しくて怖いのに、体が反応してしまう。柳さんも息を荒くしている。少しだけ顔を離して、またじっと突き刺すように俺を見た。射抜かれる。動けなくなる。

「俺以外の男に気安く触らせるな。」
「…!それは、だって、柳さんが…」
「俺が?」
「明日…二人で遊びたかったっス…」
「さっき皆には断ってきた、伝えようとお前を探していたらお前が丸井と抱き合っていただろう。」
「だ、抱き合ってなんか…!」

今度はちゅっと優しく口付けられた。

「耐えられないんだ…」

予鈴の鳴る音が校舎の方から聞こえてきたが、まるで遠い世界で響く鐘の音のようだった。



end…


独占欲は二人とも普通より強いと思いますが、そのうえで更に「柳>>>赤也」かなーと思います。だといいなあ。笑


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