赤也がその日部室に行くと、レギュラーの皆が何やら騒がしかった。

いつもはすぐに怒鳴り散らす真田でさえ仕方ないといった表情でその輪の中に入っている。そしてその輪の中心には柳がいた。赤也はその少し不思議な光景に首をかしげる。


「おっ参謀、赤也が来たぜよ」


「仁王先輩…みんな…何してるんスか?」




遅ればせながら




「何ってお前今日は…」


まさかこいつ今日が何の日か忘れているんじゃあるまいな…と皆が息を呑む。


「へ?今日…?」


目をくりくりさせながら今日が何の日かを考える2年生エースを皆が見守る。
心臓に悪い沈黙が続く。


「あっ」


思い出したかと皆が息をついたのも束の間―


「虫歯予防週間の始まり、っスよね?俺ポスター描いたっスよ!」


柳の顔がそのままの表情でぴきぴきと凍りついていった。

さすがのデータを読ませないデータマン、我らが参謀もこのときばかりは感情を隠せなかったようだ。その場にいた誰もがその表情を見て苦笑いを浮かべるのが精一杯だった。

妙に重い空気をかき混ぜるように赤也はきょろきょろと皆の顔を見る。天真爛漫な子供は時としてこのように残酷なのだ。

声もなく落ち込む柳を見かねて仁王が赤也にそっと耳打ちしてやると、赤也は顔を赤くも青くもしながらその場で飛び上がった。


「や…柳さん!」


「なんだ…」


「誕生日、おめでとうございます!」


「…忘れていたくせに…」


不謹慎にも自分に誕生日を忘れられたことで拗ねている柳を赤也は可愛いと思った。


「赤也、お前まさかプレゼントも用意しとらんのか?」


(……していない。柳さんの誕生日が6月4日なのは知っていたけど…本当にすっかりさっぱり忘れていた。)


「気にするな。」


(拗ねている柳さんもいいけど、やっぱり笑った顔が見たい。)


「や…柳さんへのプレゼントは、俺っス!」


我らが参謀の顔が今度は心なしか赤くなっている。この二人は本当に見ていて心臓に悪いやら面白いやらと皆は思う。


「俺を今から一週間、使いっパシリにしてくれていいっスよ。」


そう言ってにっこりと笑う赤也を見て柳は安心なのか残念なのか呆れなのか、いやおそらくそのどれもが入り混じったため息をひとつついて、ふわりと笑った。


「へへへっ。…ん?皆何で俺を見るんスか?」


あの柳の表情をこんな風にころころと変えることができるのは、計算のできないこの後輩くらいなのだろう。






HAPPYBIRTHDAY
RENJI.YANAGI





参謀誕生祭という素敵な企画に参加させて頂きありがとうございました^^
柳さんおめでとうっス!

20090604晴雨

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