ノベル
□LoveSickness
1ページ/1ページ
Love
Sickness
ピーン、ポーンと弾んだ音が切原家に響く。
「俺が出るー!」
母親が玄関へ向かおうとするのを制止して廊下をばたばたと走り、赤也は玄関のドアを勢いよく開けた。
開けたドアの向こうから新緑の季節の心地よい風が舞い込む。
「今日も元気だな、赤也。」
玄関先に立っていたのは狐目でおかっぱ頭の聡明そうな少年だった。
「いらっしゃい柳にーちゃん!」
満面の笑みで柳を迎える赤也に、思わず柳も笑顔になる。
「あら、蓮二くん。どうぞ上がってね。」
後ろから利発そうな赤也の母親がにっこりと笑って柳を迎え入れた。
「お邪魔します。」
柳が赤也の家の近所に引っ越してきたのは半年前のこと。
まず親同士が仲良くなり、次に柳も赤也もテニススクールに通っていることから自然と二人で遊ぶようになった。
柳はかわいい弟ができたようで進んで勉強を教えてやったり一緒にテニスをしたり、時には家族ぐるみで出かけたり食卓を囲んだりもした。
今日も一緒に宿題をやる約束をしていた。
柳が靴を脱いでそれを丁寧に揃えるや否や赤也は柳の手を取って自分の部屋へと進んだ。
「柳にいちゃんが来るから俺今日は部屋の片付けしたんスよ。」
部屋の隅を見ると大きな箱の中におもちゃや服なんかが山のように積み上げられているのが見えたが、柳はそれは言わずに赤也の頭をぽんぽんと撫でてやった。
「赤也はえらいな。」
そうすると赤也はその目を嬉しそうに細めて柳を見上げた。
「今日は何を教えようか?」
「う〜ん…算数教えて欲しいっス」
「よし、わかった…じゃあまず…」
柳の教え方はわかりやすいだけでなく例題などを巧みに使い面白く説明するので、飽きっぽい赤也も熱心にそれを聞いては問題を解くことに夢中になった。
一区切りついた頃タイミング良く母親が部屋をノックした。
「おやつとジュース持ってきたわよ。じゃ、母さんは買い物に行くから少しだけ留守番しててね。」
「いってらっしゃい」
二人は声を揃えて手を振りながらそう言った。
「休憩にしよっか。」
「はいっス」
赤也はオレンジジュースの入ったグラスを持とうとした瞬間、それを手から滑らせてしまった。
「あっ!」
勢いよくズボンの上にジュースがこぼれた。
グラスが割れることは無かったが、ズボンと床がびしょぬれだ。
「赤也、タオルあるか?」
「あ…そこの引き出しに入ってるっス…」
柳は洋服入れの引き出しからタオルを二枚取り出して、とりあえず床に零れたジュースをふき取るともう一枚で赤也のズボンを拭いてやった。
「…うーん、これは着替えたほうが早いかな…」
そう言いながらも柳はジュースがこぼれている部分をタオルでぽんぽんと水分を取るように拭いてやった。そのときふと赤也は柳からタオルを奪い取って柳に背中を向けた。
反抗するようなその態度に柳は動揺した。
「どうしたの?」
「……。」
赤也は柳に背を向けてひくひくと肩を震わせた。その頬を伝って涙がぽたりと落ちるのが見えた。
「俺……ときどき、変になる…くるしい…また変になった…俺…びょーきかもしれないっス…」
「どこが苦しいの?おなか?頭?胸?」
「…言えないっス…。」
手に持ったタオルをぎゅうっと握り締めて俯く赤也は何かに怯えているようだった。
「怒ったり、笑ったり、絶対にしないから…赤也。病気だなんて、心配するだろう?」
柳の優しい声に赤也はゆっくりと柳の方を振り返る。
柳は優しく俯く赤也の頬を撫でてやる。
赤也はぎゅっと目を瞑って股の辺りを手で押さえた。そこは微かにだが膨らんでいる。
「ここが…苦しくなるんス…」
「それは…」
「俺ビョーキなの…?柳にいちゃん…」
柳は困った。その事象がどういうものであるのか、またその対処も知っていたが教えていいものか迷った。
しかし目を何度もこすって瞼を少し赤く腫らした不安気な赤也を見ると放ってはおけなかった。
「大丈夫だよ。俺が苦しいの治してあげるから。」
その言葉に赤也の涙は止んで安心したような表情を見せた。
「そうだな…赤也、ベッドに横になって。」
赤也は風邪や腹痛で病院に行ったときにベッドに横になったことを思い出した。何でも知っている柳なら自分の悪いところも治してくれるのだろうと思った。
柳は少し戸惑った表情で、自分もぎしと音を立ててベッドに上がり赤也の足元に座った。
そして赤也の履いている濡れてしまった半ズボンに手をかけて下着も一緒にずり下ろして完全に脱がしてしまった。
「え!?」
可愛く立ち上がる小さなそれを柳に見つめられて赤也は恥ずかしくなり顔を真赤にしながら上体を起こした。
「柳にいちゃっ…恥ずかしい!」
その声を聞かなかったように柳はその立ち上がるものを手でそっと握り軽く上下に動かし始めた。
「あっ…あ…苦しい…よっ…」
「少しの我慢だよ…赤也…」
赤也のそれはその動きだけですでにぴくぴくと痙攣を始めた。
どこに向かうのか定かではないが確かに何処かへと昇りつめていくような感覚に赤也は恐怖を覚えた。しかし意志とは無関係にその何処かに達してしまいそうになる。
「あ、なんか出ちゃうよ…や…やあ…」
「…赤也…」
「あっ、あっ…あぁ…!!!」
赤也は上体をのけぞらせながら甘い声を上げて、生まれて初めて射精した。
その感覚にしばらく意識を囚われ体全体がびくびくと波打つ。動悸を感じて呼吸も荒くなった。
柳は散ったものをティッシュで綺麗に拭いてやった。
そして呆然としている赤也の隣に寄り添って、優しく頭を撫でてやる。
その優しい感触に赤也は昂ぶっていた何かが少しずつ治まっていくのを感じた。
「…俺…治ったっスか?」
「いや…赤也のは病気じゃないよ。俺も赤也のこと考えるとときどきさっきの赤也みたいになるから。」
「柳にいちゃんも…?」
「…好きな人のこと考えたら、そうなるんだよ。」
「柳にいちゃん、俺のこと、好きなの?」
「赤也のこと、好きだよ。赤也は?」
「俺も…柳にいちゃんのこと…好き…」
そう言いながら恥ずかしくて俯いたのと同時に下半身が裸のままである自分に気づいて赤也は両手でそこを隠した。
「また苦しくなったらさっきみたいに自分でしたらいいから。あ、でも家族には見つからないように、ね。」
「…っス。」
「…ときどき、二人でしよっか。」
そう言って柳はまだ熱のひかない赤也の頬をそっと触って、小さな唇にちゅっとキスをした。
――赤也は薄闇の中でふと目を覚ました。
ベッドの上で、目の前にあるのは柳の背中。
赤也は一瞬ここがどこなのか今がいつなのかわからなくなった。徐々に現実へとシフトする意識の中で見た夢のことを思い出す。
(また随分と、懐かしい夢を見たな…もう10年近くも前のこと……か。)
そう思うのと同時にその夢の所為で固くなってしまった自分の下半身を確かめる。
(……柳さんに触って欲しい…)
赤也は眠っている柳の手をそっと取って、自分の下着の中へと滑り込ませた。
そして柳の手を使って自慰を始める。自分の手とは違う、大きくて薄くて骨ばった手…大好きな、手…赤也はいつになく興奮した。
(はあ…やべ…)
そのとき柳の指が意志を持って動き始めた。
もう知り尽くされている赤也の体は柳がひとつ動くたびに確実に絶頂へと導かれて、たやすく達した。
「…懐かしい…夢を見たよ。」
柳は寝返りを打ってまだ息の荒い赤也の方を向くと、意地悪そうに口角を上げて微笑った。
やはりあのときから自分は不治の病にかかっていたのだ、と赤也は思いながら、その唇にキスをねだった。
end…
************
あとがき
Thanks4242hit!!!
リクエストありがとうございました☆
ぷにぷにした二人を想像するとどこまでも妄想が尽きません…どうしましょう^^
20090615晴雨
■BACK