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□甘い味
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甘い味
とある休日の昼下がり。
赤也の部屋で柳は勉強を教えてやっていた。
明日提出の英語の課題を一切やっていないと泣きつかれたのだ。
「うぅ〜…もう集中力が途切れたっす…。」
赤也はそう言いながら口を尖らせて背中を丸め机に顎を乗せる。
まだまだこれからという雰囲気の柳はそんな赤也を見てため息をつく。
「…そういうときは無理にやっても仕方ないな…休憩にするか。」
赤也の表情はぱっと明るくなり柳を見る。
柳は赤也に対して極端に甘い。
「俺、おやつ持ってくるっす!」
そう言って赤也はぱたぱたとリビングの方へと走っていった。
柳は赤也が解いていた問題集を手にとってぺらぺらとめくる。
そして強い筆圧で書かれた汚い字さえも愛しく思った。
「どうしたものかな…」
またぱたぱたと足音が近づいてきてばたーんとドアが開く。
赤也は足でドアを閉め、お盆に乗せたジュースとお菓子をにこにこしながら机の上に置いて座った。
「こら、足で戸を閉めるな。行儀が悪いぞ。」
「あッ、へへッ」
赤也は笑って人差し指で鼻の下をこする。
「仕方のない奴だな……」
そう言って柳は赤也が持ってきたお菓子のうちのひとつ、ポッキーをつまんでふと思いつく。
そしてチョコがついていない柄の部分を口に挟んで赤也の方を振り向いて顔を近づけた。
赤也にも柳のその行為が意図することくらいはわかったが、ぐっと近づいた顔とその先にあるであろう行為を予想して顔が真赤になる。
「食え」
お構いなしに柳はそう言う。
柳の顔を見ることができないくらいの恥ずかしさを感じながら赤也はポッキーの反対側をカリと齧った。
一口齧って柳の方を目だけ動かして見ると、柳はその次を促すようにポッキーを唇でくいと動かした。
促されるままに赤也はぽりぽりと齧る。
チョコレートが、甘い。
ときどきコクリと飲み込むそれは喉にひっかかるほど濃厚に感じられた。
いつも食べるそれよりも非道く甘く感じる。
甘いチョコレートの香りが二人の周りを漂う。
酔いそうなほどに甘い匂いだと柳は想う。
そして最も甘い部分に赤也の唇が辿りついた。
唇が微かに触れるだけで心臓がぎゅっと締め付けられるようにどきどきする。
柳はくわえていた柄の部分を赤也の口内に押し込むとともに、自らの舌も侵入させた。
「…ッ」
チョコの味がした。
甘い、非道く甘いキス。
赤也の口内に残るざらついた感触を柳は舐め取り、ごくりと音を鳴らして飲み込む。
赤也はたまらずその大きな瞳をぎゅっと瞑り、柳の首に両手を回してその甘さに耐える。
柳はそれに応えるように、赤也の腰に手を回しぎゅっと抱き寄せる。
柳の舌が赤也の舌に触れる。
それだけで身体に電流が走るようで思わず唇から吐息が漏れる。
柳はゆっくりと赤也の舌を絡め取りその感触を楽しむように擦り合わせる。
舌が熱い。
こんなにも深く甘い口付けを施されるのは初めてで赤也はくらくらと眩暈がするようだった。
自分だけがこんなにも興奮しているのだろうかと少し恥ずかしくなる。
しかし抱きついている柳の首筋が熱いことに気づく。
柳もまたこれまで抑えていたものを吐き出すように赤也とのキスに興奮していた。
二人はその行為に溺れていく。
互いの想いを分け与えるかのように、長いキス。
長いキスによって疼き続ける下半身を赤也は我慢できずにもぞもぞと動かした。
それに気づいた柳はそっとその中心を軽く指ではじいてやる。
「はぁんッ」
熱を帯びた声とともに唇が離れる。
顔が紅潮し目は潤み目じりが赤く染まり、口の端からは唾液を垂らしている赤也を柳は今すぐにでも押し倒したい衝動に駆られた。
「赤也…お前はいやらしいな。」
柳の下半身もおそらくは赤也と同じ状態になっている。
「はあ…柳さんのほうが…えろいっすよ…」
「だがこの続きは、赤也の宿題が終わってからだ。」
そう言っておでこに軽くちゅっとキスをする。
「えぇ〜ッ、そんなの無いっすよ〜!」
赤也はおとなしかったのが急に元に戻って続きをねだる。
「俺だって我慢してるんだ。早く終わらせろ。」
柳はそう言って、くしゃっと赤也の癖毛を優しく撫でてやった。
end…
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ちゅっちゅさせたい気分なのでした^^
20090504晴雨
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