ノベル2
□One
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そっと触れ合う二人の呼吸。
柳は自分とは違う艶やかな感触を、赤也は自分とは違う滑らかな感触を、互いの唇で確かめ合っていた。
One
二人が初めてキスしたのは、誰もいなくなり、夜を帯びた濃い夕陽の差し込む部室。
軽く触れた瞬間、そこから全身が焼け付くように熱くなり、心臓がうるさいくらいに鳴っていた。その日は二人とも眠れずにそれぞれの夜を過ごした。
翌日の寝不足ですら、幸せの余韻だった。
二回目のキスは誰もいない夜の公園。
月と野良猫に見られているようでなんだか気恥ずかしかった。これ以上ないと思うくらいに好きなのに、キスをするとどうしようもないくらいに想いが溢れてしまうようで、そのあとはそんな想いを落ち着かせるように、分け合うように、強くぎゅっと抱きしめあった。
そして今、柳の部屋で、3回目のキスをした。
4回、5回…とこの数分間で、もう何度キスをしたかわからない。
擦れ合う唇が次第に敏感になっていく。
ずっと閉じたまま重ねていただけの唇を、柳は軽く開いて、赤也の下唇だけを食(は)んだ。
そして赤也の唇を割って舌を滑りこませる。
赤也はそんなキスは知らないといったふうに固く唇を閉ざしたままだ。
柳はそっと赤也の手に指を絡めて、もう片方の手を後頭部に回して自らに引き寄せる。
閉ざされた唇を少しずつ開くように舌で優しく促すと、赤也もそれに応えて口を開いた。
舌は徐々に深く差し込まれ赤也の舌に到達すると、それを絡めとりぎこちなく動いた。
「…んっ…」
今まで感じたのことのない刺激に、どちらからともなく声が漏れる。
そっと顔を離すと、互いの紅潮した顔がよく見えた。
「赤也…」
「…柳さん」
柳はそっと、赤也の頬に手を置いて優しくさする。赤也はキスの余韻とその優しい感触にうっとりとした。
「赤也…」
柳はまだ物足りなそうな顔で、頼りなく言い澱むように名前を呼ぶ。
「柳さん?」
その違和感に、赤也の胸に微かな不安が過ぎる。
「あ…その、だな…」
「なんっスか…」
「ん…」
よほど言いにくいことなのだろう、柳は頭をかいて俯いた。その仕草に赤也の不安は煽られた。
「…もしかして俺のこと嫌になったとかそういうのですか?」
言いながら悲しくなって赤也の目が潤む。それを見た柳は狼狽たえて否定した。
「違う…すまない…そうじゃない…そうじゃ…ないんだ…」
柳は大きな手で顔を覆って俯いた。
「…じゃあ、なんスか…」
ぐすっと鼻をすすって赤也は柳を覗き込むがふいと顔をそらされた。
「お前と…えっちなことがしたい…」
「…え」
柳が真赤になって狼狽する姿なんて、自分以外の誰も見ることはできないだろう。それにきっと誰に言ったって信じやしない。いや、もったいないから誰にだって言わないけど。
「だめなら、いいんだ…忘れてくれ…」
「…いいっスよ……俺だって柳さんと…そういうことしたいと思ってたっスけど、柳さんはそういうの興味ないのかと…思ってたっスから…」
気づけば赤也は緊張からか、なぜか正座をして姿勢を正していた。
「馬鹿…そんなわけないだろう…」
もう何度頭の中でお前を犯したか、数え切れやしないのに。この脳内をお前が知ったら、きっと軽蔑するだろうと思うくらいに非道く―。
「じゃあ…するぞ…」
そう言って、再び顔を近づけて優しいキスを繰り返す。次第に舌が絡み合って、互いに昂ぶる何かに呼吸が荒くなる。
そっと柳に手を引かれ、赤也は柳のベッドに寝かされた。その上に柳がまたがり、赤也の制服のボタンをぷつりぷつりと外していく。
少しずつ露になる白い肌、部室でちらと盗み見ることはあったが、いざ目の前にすると本当に透き通るほどに白くて柳は思わず喉を鳴らした。
そしてきっと敏感であろう桃色のそこは、刺激を期待してか腫れ上がっていた。
柳の指がそれをぴんと弾くと、赤也の体はびくりと跳ねる。
気をよくした柳はそれに口付けて、舌で強く押し付けたり舐めたり、時に軽く噛んでやったりした。空いた方の手でもう一方も摘んで転がしてやると、びくびくと体を波打たせながら柳の太腿に股間をこすりつけるように腰を動かした。
「はあ…いやらしいんだな…赤也は…」
「んっ…ちが…ああっ」
柳がズボンの上から股間を触ると、赤也は体を震わせた。
「だ…だめ…も…イっちゃいそうになるっすよお…」
手で顔を覆い、涙で声を震わせながら助けを請う姿に柳は理性というやつを失くしてしまいそうになる。
しかし落ち着いた手つきでかちゃかちゃと赤也のベルトを外してするりと制服のズボンを脱がす。続けて、下着に手をかけて脱がしてやろうとすると赤也は恥ずかしそうに目をとじながらも、少し腰を浮かせて柳が脱がせやすいようにした。
体の中心で限界が近そうなほど立ち上がっている性器は、先走るものでぐっしょりと濡れていた。
それは柳が何度も頭の中で想像していたものよりもずっといやらしく美しかった。
柳は自分も制服を脱ぎ捨てて、裸になる。
初めて見る柳のものに赤也は目を見張った。
「柳さん…大きい…」
「そうか?」
二人とも裸になったところで、再び互いの肌を感じるように抱き合ってキスをする。あたたかい他人の肌は、安心するような興奮するような不思議な感触でそれを互いに楽しんだ。
腹の上で微かに性器が擦れると、甘い吐息が漏れる。
唇を離すと、柳は自分の人差し指を舐めて、そっと赤也の後ろの穴にあてがった。
その刺激にそれはおぼえずひくりと動いた。
「赤也のここに、挿れたいんだが…」
そう言いながら、唾液で湿らせた指をその穴に沈めていく。
「ひぃっ…あっ…」
初めて感じる異物感に恐怖を感じながら赤也は身を震わせた。しかしそれと同時に、柳と繋がるためにはここを使うしかないことを悟り、できるだけ体の力を抜いてそれに従った。
奥まで差し込んだ人差し指を、またゆっくりと引き抜いて、そしてまた奥まで深く沈める。
「痛く…ないか?」
「…大丈夫…っス…」
人差し指を完全に引き抜いて、次に柳は赤也の膝を立てて、その穴のある場所に顔を埋めた。
柳が自分の尻の間に顔を埋めているのが見えると、羞恥に涙が出そうになる。
柳は舌でその穴に触れ、少しずつ少しずつ深く差し込んで懐柔していく。
「んっ…」
ぬるっと出し入れされるそれが、しばらくすると快感に変わり赤也は身を捩じらせた。
「んん…もう…柳さんの…いれて欲しいっス…」
その言葉に柳は頭が沸騰するように熱くなるのを感じて、ぐっと自分の熱く猛ったものを穴にあてがう。
自身の先走りを潤滑油にして、ゆっくりと、確実に、沈めていく。
「全部…入った…」
「んっ…あ…」
快感よりはおそらく痛みに顔を歪ませているのであろう、健気な姿を見て、柳はそっと赤也の頭を撫でて、おでこにキスを落とす。
赤也は柳の背中に手を回してぎゅっとしがみついた。赤也の大きな両の目からぽろりと涙が落ちる。
「…嬉しいっス…俺…ひとつになれて…」
ああ、お前はいつだってそうだ。
傷だらけでも、幸せだって、言うんだな。
「赤也…愛してるよ…」
end…
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あとがき
はじめて物語りでした。
中途半端に終わってしまいスイマセン…
続きはまた別の初めて物語にて。笑
20090717晴雨
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