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□カ ン ケ イ 。
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絶対に泊まらない。
それが彼と私との暗黙のルール。
カ ン ケ イ 。
「…帰る」
「………」
背を向けて寝ている松本潤に返事は帰ってこないと知りながら、なんども同じ事を言う。
そこに私の存在を知ってほしかったのかもしれない。
「朝飯、作っていくから、食べるも捨てるかかってに」
冷めてしまって、結局捨てられるのはしってる。
まだ朝の三時だ。
ただ、少しでも、私を認識してもらいたくて。
口を開く。
重い身体を引きずって一人分の暖かさが残る、ふたりいたベットから降りて置いてある衣服を着る。
シャワーは、浴びない。
なるたけ私の存在は残さない。
さっさとひとつ食パンを焼いて四つ目玉焼きをつくる。
食パンは冷めたらかたくなるだけだから、勝手に作ってもらって。
ふたつ、目玉焼きを残す。
「おじゃましました」
寒さの真っ只中にある冬の朝。
少し薄いコートのポケットに手を突っ込む。
「さむ」
いつまで、こんなカンケイは続くのだろうか。
アイドルとの、肉体カンケイ。
カラダだけのカンケイ。
「………ふぅ」
†
また、呼び出しメール。
「六時に、こい、か」
いつもにしては、早い時間。
「お邪魔します…………松本?」
少し、怖かった。
「……よぉ」
「あ、うん……どうした?」
「別に」
怒っている。
まあいいか。
「晩飯食った?」
「食ってない」
「…………そう」
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