刹那




きらく
きおく
きろく
きみ、く?





◆パラダイムレフト 

叶わない願いを夢と呼んだ
描いた夢を理想と呼んだ

春の終わりも夏の色も
知らないままで時をとめた
才能はいつだって若く
噎せ返るような緑だ

視力と土壌で世界が変わっても
解釈だけの現実が回る
日曜夕暮れのコード進行
言われる前からのエモーショナル


「どんどんひとりが上手になるね」
望んだ訳ではないのだけれど

秋の愁いも冬の火照りも
ガラスの向こう触れないまま
美徳と謂われた協調性が
静かに首を絞めていく

健全な起死念慮を飼い慣らして
死んだ魚の目尻を下げる
右の奥歯で噛み続けるのは
終わり切らないあの日の感情


他人の不幸を見付けたくて
うつむき肩を丸めている
本当に見たいのはただ夢の続き


2022/08/29(Mon) 08:17 

◆私のホルマリン 

寂しくなると思い出す
10年前のわたしのあなた

笑うと下がるまなじりも
低く穏やかに笑う声も
電話越しの息づかいも
揺られた夜の目配せも
私から目をそむけた背中も

黒く優しい絶望にまみれ
寝たくない夜が更けていく

一番すきだったあなたを
ホルマリンに沈めたい
老いも衰えもしないまま
ちゃんとわたしお手入れするから

一番かわいかった私も
ホルマリンに沈めてね
ひとりの時に思い出して
たくさんたくさん後悔してね

2021/05/17(Mon) 08:17 

◆不慮の事故で死にたい 

不慮の事故で死にたい
唐突で明確で不可逆な
一方的な事由で

未来を断つのもひとつのリスクヘッジだ
終身保障の保険をかけて
救済を待ち絶望するより
ずっと容易な他界他界

要求水準ばかり上がって
市場の様相は底辺を掘る
消費者面した肥えた目が
揃い揃って被消費者

楽しいことも嬉しいことも
ゼロでは無いけど経年劣化
淡い幸せは角砂糖
不幸せに塗る八面体は
生命維持の必需品

義務を果たしてこその権利
尊厳の維持と生活保持は
担当部署が異なります
令月にして風吹きすさび
城春にして 軋轢深し

溢れるニュースは他人事
厭世 うらぶれば意思無き延命
涙は干せば塩になるのに
砂糖は産み出せない人体

幸福という博打にすがって
余命幾ばくの負け越しライフ


2020/11/13(Fri) 21:14 

◆あの夏の合言葉 

匂いに目を向ければ打ち水の照り返し
虫取網でシャボン玉はすくえなくて
すべる指先 君が笑った証

突き抜けた空、白い木陰、伸びた夕影

高いだけの視界を履き違えるな
無機質な箱の列を景色とは言わない

努力を怠った僕に送る言葉なんて

答えを教えてくれよ
8月が僕らを置き去りにするのは
そうだ6歳の頃から知っていたじゃないか


会話の隙間を蝉時雨が埋める
甘く嗄れた深緑の気配
遥か追う背中 擦り抜けた後ろ髪

流れる海、無言の水平、青いアスファルト

高いだけの景色を履き違えるな
足元は同じだ 君だけの頭が高い

思考を停止した僕に嘆く権利なんて

叱らないでくれよ
9月が僕らを待っちゃくれないのは
そうさ泣き喚いても変わらなかったじゃないか


半世紀生きずに猫のように死にたい
老いさらばえた姿を晒したくないんだ
自分がわからなくなってそれでも薬を飲んで
そんなところに人生はあるかい

答えを許してくれよ
勝手に物語を付加して
嗚呼 嘆いていただけ 途方もない対価


2019/08/10(Sat) 00:20 

◆角砂糖とアイスティー 


細いかかとの足音も
まばたきの揺らす空気さえ
わたしに成る前に消えて

見返りをあいした
がらくたは放って
とりとめ無く今ただ
明け暮れた月夜だけに
角砂糖をとかすの

ほろり痩せる真四角
なればこそ美しく
いびつな氷砂糖は
優しいひとの頬に刺つ

傷付けた血が沁み軋む
からだは数えきれず
環状する痛みに
わざと依存してるの

柔らかな希死念慮は
黒髪を二度撫でて
もっと華奢ならば
もっと冷徹ならば
あなたの視線にも無感動でいられた

お願い ねぇ こっちを向かないで


2019/06/18(Tue) 23:33 

◆恋だってしたかった 


いつまでだって子どもでいたい
そう思ってた躰が痛い
繰り返す逃避 ただひとり同士
並べてははじく欲張りな錯覚
こじれているのは片方だから
疾うの昔に枯れた花束
断てば芍薬 居座れ葉牡丹
歩けば失くす百合の花

渇望しなかった愛を
取られては拗ねた顔
さよならした居場所何度も
追懐して飼い殺す
ばかみたいな親愛に
ずっといちばんを探していた

邂逅と自家撞着の白昼夢よりあいを込めて


2019/03/07(Thu) 20:04 

◆憐れ泡沫されど、別の未来を得んと 


花を手向けた曲がり角
息をためらう大通り
虚無を飲み込む箱の中
10日で死んだ定期券

全てが悪い訳ではない
憧れは確かにあった
初めてのブラックコーヒー
書き散らかした理想の合間に
すいと伸びた黒い矢印
それがいつか
踊場に踞り監視カメラに怯えていた

蠢く人に他意も無ければ意思も無い
選別されても使い捨ての新品
中古は要らない ご自由にどうぞ

解雇は今日付け、手に入った明日
回顧した今日、確かに死んだあたし
邂逅する恐怖、立ちすくんだ足
解放せよ残響、弔い選ぶ明日


2019/02/04(Mon) 18:30 

◆限界って何処 




振り出した雨に
涙が出そう
グッバイレイニー
弱いあたしが
一番嫌いよ




2011/06/01(Wed) 15:32 

◆no title 


頼られるには
頼らなきゃいけない

それってなんか
難しいね

- - - - - キ リ ト リ - - - - -

強くなりたいと願うのは
間違ったことですか



2011/04/18(Mon) 19:50 

◆夢ならよかったのにね 



前を向いて 歩こうとするたび
あなたのことが 頭をよぎる
笑顔も涙も あの雨の日も
少しずつ 薄れてゆく

忘れたくないよ
あなたがわたしにくれたもの
それから
あなたが気づいていない わたし



2011/04/06(Wed) 18:59 

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