エッセイ集

□経営者の言葉
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経営者の言葉――三木谷浩史



そんなに注目しているわけではなかったのですが,「AERA09.5.18」にインタビューが出ていたのをたまたま目にしたところ,響く言葉があったので,若干引用します。

とりあえず,「巧いな」と思ったのが,インタビュアーから,いわゆる「TBS」問題を突っ込まれたときのこのやりとり。



――経営統合は難しい状況ですね。
「ネットと放送の壁は低くなった。なにがなんでも放送局という時代ではもうないですよ。3年5カ月の間に状況は変わってしまった。」
――ならば株を手放して,身軽になれば。
「損失の処理は前の決算でやったから,急いで売る必要はないんです。何が起こるかわからない時代です。持っていればまた局面が変わり,使い道があるかも知れません。」



突っ込まれると思って,予め用意していたのでしょうか。
ほとんど,詭弁の類の感じもするのですが,自分でやるとなると中々上手い切り返しなどできるものではない。
こういったやりとりは,なるべく,頭に入れておいて,ストックしていると良いのかも。



後は,まっとうな「使えそうな言葉」です。

「ユア・ベスト・イズ・ノット・イナフという言葉がある。精一杯やった,では足らない。無理と思う高い目標を達成してはじめて道が開ける。」

最近,管理者は,「停滞は衰亡」という考え方に親和性を持つようになってきました。
ポパーを読み直し,進化論的な認識の発展に感化され易くなったせいかも知りませんが。

たとえば



「きのうと同じなら未来はない。
商品力はどこも同じ。来店者の9割は店頭で接客されて買うから、ビジネスのすべては店頭にある。そこで付加価値を作らないと、わざわざ来てもらえない。
ファッションは今日売れたものが翌日も売れる保証は全くない。
毎年新しい店を入れるのは、過去の売れ筋を一歩遅れてなぞっても失敗するだけだから。今までのレールに乗っているだけでは絶対にダメ。ビジネスには常にリセットが必要。今までの延長には何もない。」

という花崎淑夫ルミネ社長の言葉も同様のものでしょう。

さらには,最近,目にした郷ひろみ(!)のコレ。

「よく変わらないっていわれるんだけど、そうではなくてボクが一番変わっているんじゃないかなって。変わっているから変わらないようにみえる。」(09.5.26『カスペウチクル?』)

「変わらないためには,変わっていく必要がある。」というのは,誰か忘れたのですが,有名なフレーズで,しばらく前の「社長・島耕作」の扉にも同旨のことが出ていました。
多分,演出家が考えて言わせたのではないか,と思うのですが。



「自由な社風を感ずるソニーより,締めてかかるパナソニックの業績がいい。規律を見失うと組織はゆるむ。原理原則を再確認しよう。」

「楽天」というと自由なイメージがあるので,意外は意外です。
深く言えば,自由を意思の制御と規範的に捉えたカントに親和性があるのでしょうが,他方で,ベンチャー企業で自由なのは経営者だけ,とも言えそうです。



「成功への裏付けなんてこれっぽっちもなかったが失敗への不安もなかった。これからはインターネットだというわくわくした思いだけが支えだった。」

やはり,前に進むにはプラス思考が必要だということでしょう。
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