行政関係訴訟の要点

□国家賠償請求訴訟の要点
7ページ/7ページ

《国賠法4条》その2

【除斥期間】

・民法724条後段が適用される。

・「不法行為のとき」とはいつか?
→2説の対立がある。
(1)説=加害行為時説
(2)説=損害発生時説

・民法724条後段は,時効を定めたものか,除斥期間を定めたものか。
 
→除斥期間
(最高裁平成元年12月21日第一小法廷判決民集43−12−2209)
 民法724条後段の規定は,不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解するのが相当である。けだし,同条がその前段で3年の短期の時効について規定し,更に同条後段で20年の長期の時効を規定していると解することは,不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する同条の規定の趣旨に沿わず,むしろ同条前段の3年の時効は損害及び加害者の認識という被害者側の主観的な事情によってその完成が左右されるが,同条後段の20年の期間は被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期・間を画一的に定めたものと解するのが相当であるからである。」
「裁判所は,除斥期間の性質にかんがみ,保険請求権が除斥期間の経過により消滅した旨の主張がなくても,右期間の経過により本件請求権が消滅したものと判断すべきであり,したがって,……信義則違反又は権利濫用の主張は,主張自体失当であって採用の限りではない。」

・法行為を原因として心神喪失の常況にある被害者の損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間の起算点
(最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決民集52―4−1087(東京予防接種禍訴訟)
「不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において,その後当該被害者が禁治産宣告を受け,後見人に就職した者がその時から6か月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使ししたなど特段の事情があるときは,民法158条の法意に照らし,同724条後段の効果は生じない。」

・除斥期間の起算点
(最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決民集58−4―1032(筑豊じん肺訴訟)
「民法724条後段の除斥間の起算点は,『不法行為ノ時』と規定されており,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には,加害行為の時が起算点となると考えられるが,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となる。」
(最高裁平成16年10月15日第二小法廷判決民集58−7―1802(関西水俣訴訟)
「民法724条後段所定の除斥期間は,「不法行為ノ時ヨリ二十年」と規定されており,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には,加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし,身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害や,一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる傷病による損害のように当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解するのが相当である。本件患者のそれぞれが水俣湾周辺地域から他の地位へ転居した時点が各自についての加害行為の終了した時であるが,水俣病患者の中には,潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること,遅発性水俣病の患者においては,水俣湾又はその周辺海域の魚介類の摂取を中止してから4年以内に水俣病の症状が客観的に現れることなど,原審の認定した事実関係の下では,上記転居から遅くとも4年を経過した時点が本件における除斥期間の起算点となるとした原審の判断も,是認しうるものということができる。」
(最高裁平成18年6月16日第二小法廷判決民集60−5−1997)(札幌B肝先行訴訟)
B型肝炎を発症したことによる損害は,その損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に発生するものと認められるから,除斥期間の起算点は,加害行為(本件集団予防接種等)の時ではなく,損害の発生(B型肝炎の発症)の時というべきである。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ