行政関係訴訟の要点

□国家賠償請求訴訟の要点
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《国家賠償法2条――総説》
問 国家賠償法2条の要件を挙げよ。



答 国賠法2条の要件
(1)公の営造物であること
(2)公の営造物の設置・管理に瑕疵があること
(3)損害が発生していること
(4)公の営造物の設置・管理の瑕疵と損害との間に因果関係のあること



《国賠法2条――公の営造物》

問 国賠法2条における「公の営造物」とは何か。



答 国又は地方公共団体その他これに準ずる行政主体により直接公の目的のために供用される個々の有体物をいう。
 民法717条のように「土地ノ工作物」に限定されるものではなく,それよりも広い概念である。



問 「公の営造物」に該当するものとして問題になるものとしては何があるか。
(1)自然公物
(2)国有財産法上の普通財産(国有財産法3条3項)=該当しない。
(3)間接的に公の目的に供用される行政財産(国有林野等)=該当しない。



《国賠法2条――設置又は管理の瑕疵》

問 国賠法2条にいう「設置又は管理の瑕疵」とは何か。



答 営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。



問 「設置又は管理の瑕疵」の判断基準は何か。



答 回避可能性及び予見可能性がない場合には,国賠法2条の責任は認められない。



問 回避可能性及び予見可能性の立証責任は,誰が負うか。



答 いずれも不存在の事実を国において主張立証する必要がある(最高裁平成7年7月7日第二小法廷判決・民集49−7−2599)。



問 設置又は管理の瑕疵の有無は,どのように判断するか。



答 以下のような事情等を総合考慮して個別具体的に判断する(最高裁昭和53年7月4日第三小法廷判決・民集32−5−809)
(1)当該営造物の構造
(2)本来の用法
(3)場所的環境
(4)利用状況



《国賠法2条――予見可能性》

問 国賠法2条の予見可能性が問題となったいわゆる「神戸防護柵訴訟」について概説せよ。



答 最高裁昭和53年7月4日判決・民集32−5−809
 道路防護柵に腰掛けて遊んでいた子どもが誤って転落した事例。
 判決では,防護柵は,通行時における転落防止の目的から見ればその安全性に欠けるところはなく,子どもの転落事故は,設置管理者の通常予測することのできない行動に起因するものであったとして,設置又は管理の瑕疵はないとした。



《国賠法2条――回避可能性》

問 国賠法2条の予見可能性が問題となった最高裁昭和50年6月26日判決の事案について概説せよ。



答 最高裁昭和50年6月26日第一小法廷判決・民集29−6−851
 奈良県内の県道上のセンターライン付近に工事標識板,バリケード,赤色灯標注が倒れて散乱し,赤色灯も消えていたところ,そこを通過しようとした自動車の運転手が急ハンドルを切って衝突をのがれたが,車は道路外に転落し,助手席の同乗者が死亡した事例。判決では,工事標識,バリケード,赤色灯標注が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから,道路の安全性に欠如があったといわざるを得ないが,それは夜間,しかも事故発生直前(約1時間前)に先行した他車によって惹起されたものであり,時間的に被上告人において遅滞なくこれを現状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったというべく,このような状況のもとにおいては,被上告人の道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である。
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