行政関係訴訟の要点

□国家賠償請求訴訟の要点
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《裁判国賠》
問 裁判官による裁判について,国家賠償法は適用されるか。



答 積極。
最高裁昭和43年3月15日第二小法廷判決判例時報524号48ページ
「裁判官のなす職務上の行為について,一般に,国家賠償法の適用があることは所論のとおりであって,裁判官の行う裁判についても,その本質に由来する制約はあるが,同法の適用が当然排除されるものではない。」



問 いかなる場合に,裁判官による裁判が国家賠償法上違法となるか。



答 最高裁昭和57年3月12日第二小法廷判決民集367−3―329
 確定した民事判決が担当裁判官の法令適用の誤りによる誤判であるとする国倍請求事件で,裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済法法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても,当然に国賠法上の違法行為があったとして,国賠責任が生じるものではなく,その責任が肯定されるためには,「当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とする。」と判示した。



《検察国賠》
問 無罪判決が確定した後,国賠請求訴訟が提起された場合,逮捕・勾留や公訴提起の違法性をどのように考えるべきか。



答 以下のような判例がある。
(1)最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決民集32−2―1367(芦別国賠訴訟)
「刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留,公訴の提起・追行,起訴後の勾留が違法となるということはない。けだし,逮捕・勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり,かつ,必要性が認められるかぎり適法であり,公訴の提起は,検察官が裁判所に対して犯罪の成否,刑罰権の存否につき審判を求める意思表示にほかならないのであるから,起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当だからである。」
(2)最高裁平成元年6月29日第一小法廷判決民集43−6−664(沖縄ゼネスト国賠訴訟)『合理的理由欠如説』
「公訴の提起時において,検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば,右公訴の提起は違法性を欠くものと解するのが相当である。したがって,公訴の提起後その追行時に公判廷に初めて現れた証拠資料であって,通常の捜査を遂行しても公訴の提起前に収集することができなかったと認められる証拠資料をもって公訴提起の違法性を有無を判断する資料とすることは許されないものというべきである。」

《公務員の法の解釈・適用の誤りが問題となる場合》
問 公務員の法の解釈・適用が誤りといえるのはどのような場合か。



答 公務員が客観的には法の解釈を誤った場合であっても,それが明らかに違法とはいえない政省令や通達等に従って事務処理をした結果である場合には,職務上尽くすべき注意義務を尽くしていなかったとはいえず,違法とはいえない。



問 公務員の法の解釈・適用のあり方が問題となった代表的な最高裁判例を挙げよ。



答 以下のような判例がある。
(1)最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決判時1675−48
「市町村長が住民票に法定の事項を記載する行為は,たとえ記載の内容に当該記載に係る住民等の権利ないし利益を害するところがあったとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,市町村長が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と右行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り,右の評価を受けるものと解するのが相当である。」
(2)最高裁平成19年11月1日第一小法廷判決民集61−8−2733(広島徴用事件)
 上告人(国)の担当者の発出した通達の定めが法の解釈を誤る違法なものであったとしても,そのことから直ちに同通達を発出し,これに従った取扱いを継続した上告人の担当者の行為に国賠法1条1項にいう違法があったと評価されることにはならず,上告人の担当者が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認められるような事情がある場合に限り,上記の評価がされることになるものと解するのが相当であると判示した。
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