行政関係訴訟の要点

□国家賠償請求訴訟の要点
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《国家賠償法と民法上の不法行為との相違》
 
 4点

(1)使用者免責 
民法  ○(715条1項但) 
国賠法 ×
(2)求償要件  
民法  →故意,過失 (715条3項)
国賠法 →故意,重過失(1条2項)
(3)個人への請求
   民法  →可能
   国賠法 →不可(最高裁昭和53年10月20日判決民集32-7-1367)
(4)相互主義
   民法  ×
   国賠法 ○

《1条1項》
 
【責任の本質】

×自己責任説=国又は公共団体は,自らの危険の対外的発現に対して直接に責任を負うものであって,加害公務員に代わってその不法行為責任を負担するのではない。
○代位責任説=加害公務員が負うべき損害賠償責任を国又は公共団体が代わって責任を負う。
→加害公務員の故意過失が要件,国等の免責なし,求償権

【公権力の行使】

問 機能は?

答 民法の不法行為規定を分けるもの。

問 「公権力の行使」とは?

答 広義説=国や公共団体の活動のうち,私経済作用(医療,運輸等私人と同様の立場でする取引行為等)と国賠法2条の対象となる活動を除くすべての活動が該当する。

【違法性論】

問 学説状況


(1)結果不法説=法益侵害を違法性の本質ないし判断対象とする。
○(2)行為不法説=法規違反の行為を違法性の本質ないし判断対象とする。
   更に以下のような説がある。
   1)公権力発動要件欠如説
  ○2)職務行為懈怠説=公務員として職務上尽くすべき注意義務を懈怠したことをもって違法とする。
 (3)相関関係説(民法上の通説)

問 取消訴訟における違法性との関係

答 
 (1)違法性同一説 
○(2)違法性相対説(井上・最高裁判例解説民事篇平成5年度377頁)
 行政処分取消訴訟における違法性は,行政処分の法的効果発生の前提である法的要件充足性の有無を問題とするのに対し,
 国家賠償請求訴訟における違法性は,損害店舗の責任を誰に負わせるのが公平かという見地に立って行政処分の法的要件以外の諸種の要素も対象として総合判断すべきものであるから,
国家賠償法1条1項にいう違法性は,行政処分の効力発生要件関する違法性とはその性質を異にするものであり,究極的には,他人に損害を加えることが法の許容するところであるかどうかという見地からする行為規範違反性であると考えられる。

※最高裁平成17年9月14日判決民集59-7-2087
「国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。

《立法行為と国賠法1条1項の違法性》

【最高裁昭和60年11月21日】
国会議員は,立法に関しては,原則として,国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって,国会議員の立法行為は,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うがごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限り,国家賠償法1条1項の規定を適用の上,違法の評価を受けないものといわなければならない。

【最高裁平成17年9月14日】
立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所用の立法措置を採ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。
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