法律

□民法総則
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《通謀虚偽表示》(3)

5 94条2項類推適用(教材97,四宮169以下)

(1)概要

判例は,虚偽表示にそのまま該当する場合でなくても,真実の権利者と異なる者に不動産の登記名義が存し,それが何らかの意味で真実の権利者の意思にかかわるものである場合には,その登記を信頼した第三者を94条2項の類推適用ないし94条2項の精神を含む表見法理により,真実の権利者の犠牲において保護しようとしている。

(2)権利外観法理・表見法理
真実に反する外観が存在する場合に,その外観を作り出した者に何らかの責任があり,外観を信頼した者には責任がないときには,その外観を作った者の犠牲において,概観を信じた者を保護するという考え方を権利外観法理,表見法理などという
(内田T53,加藤T248,四宮162)。

※ほかに外観法理(加藤T248),信頼保護法理(四宮162)などという用語法もある。

この法理を一般的に定めた条文は存在しないが,94条2項,110条,192条は,その現れとされ(四宮162),94条2項は,その典型的な適用例とされることから,その類推適用をするという形で,この法理の適用がなされている(内田T53)。

(3)裁判例(四宮169以下)
 
ア 意思外形対応型―外形自己作出型

権利者自身が,外形を作出し,その外形を第三者が信頼した場合,第三者は,94条2項類推適用により保護される(四宮170)。
この場合,純粋の虚偽表示の場合のように,外形の作出に名義人も関与することは必要ではない(後掲(イ)最高裁判所昭和45年7月24日判決・民集24巻1116ページ)。

(ア)最高裁判所昭和29年8月20日判決・民集8巻8号1505ページ
〔!引用がやや不適切であり、訂正必要〕

売買によりAから不動産所有権を取得しBが,Cと相談の上,直接のCの妾Dに移転登記をしたという事案で,AからBへの移転登記語にBからDへの虚偽表示による移転登記がなされた場合と異ならないとして,民法94条2項の類推適用を肯定した。

(イ)最高裁判所昭和45年7月24日判決・民集24巻7号1116ページ

Aから山林を買い受けたBが,その子Cの承諾なくして直接にAからCへの移転登記をしたところ,Cが善意のDに譲渡した事案について,仮装名義人の承諾がなくとも民法94条2項の類推適用を妨げないとした。

※この判例により,民法94条2項の類推適用という理論が真正権利者の承認を要件として不実外形(特に登記)に対する信頼を保護するという一般的法理のための仮託的構成であるという性格がより鮮明になったとされる(昭和45年最判解説(下)571,百選T45(磯村保))。

(ウ)最高裁判所昭和41年3月18日判決・民集20巻451ページ要旨

建物を新築したAがB名義で保存登記をしたところ,Bが勝手にCに処分し,CはBが権利者だと思って譲り受けた,という場合には,94条2項の類推適用によってCは保護される。
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