法律
□民法総則
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《通謀虚偽表示》(1)
【文献】
教材 法務総合研究所・民法総則(第六版)
我妻T 我妻榮・新訂民法総則(民法講義T)
四宮 四宮和夫・民法総則(第四版)
内田T 内田貴・民法T第3版・総則・物権総論
【条文】
(通謀虚偽表示)
94条
1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする。
2項 前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない。
1 意義(教材95,四宮162)
通謀虚偽表示=相手方と通じて行った真意でない意思表示
2 効力(四宮162)
無効(94条1項)
※双方が表示どおりの法律効果を発生させないことを合意
※反面第三者の保護が必要→94条2項
3 第三者の保護(94条2項)
(1)第三者(四宮163)
=虚偽表示の当事者及び一般承継人ではなくして,意思表示の目的ないし効果について利害関係を有するに至った者(大審院昭和20年11月26日判決・民集24巻120ページ)
(2)善意(四宮163)
・基準時=第三者たる地位を取得した時点
・過失の要否(争いあり)
→不要(大審院昭和12年8月10日判決・新聞4185号9ページ等,通説)
※外形を信頼する者を保護する制度は,無過失を要件とするのが原則だが,自分で外形を作った者が外形どおりの責任を負うべき場合だから,無過失を必要としない(我妻T292)。
・証明責任
→第三者(最高裁判所昭和41年12月22日判決・民集20巻2168ページ等,通説)
(3)対抗することのできない主体
当事者だけではなく,他の第三者もできない(四宮163)。なお,(5)。
(4)第三者からの転得者
・「第三者」には,転得者も含まれる。
・直接の「第三者」が悪意+転得者が善意
→転得者保護(最高裁判所昭和45年7月24日判決・民集24巻1116ページ)
・直接の「第三者」が善意+転得者が悪意
→転得者保護(大審院昭和6年10月24日判決・新聞3334号4ページ)
※「絶対的構成」
・失踪宣告の処理に同じ。
・177条の背信的悪意者の処理と相違(相対的構成)。
※「絶対的構成」の理由(我妻T292,内田T57)
・転得者は,善意者の地位を承継する。
・相対的構成では,善意の第三者が悪意者から追奪担保責任を問われる。
・原所有者は,善意の第三者が出現した時点で取り返しをあきらめた。
(5)対抗要件の具備の要否
虚偽表示をした者との関係→不要(最高裁判所昭和44年5月27日判決・民集23巻6号998ページ)。
※転々譲渡の前主と後主
虚偽表示をした原所有者から譲渡を受けた第三者との関係→必要
問題は,通謀の相手方に登記が移転しているが,善意の第三者には移転していないとき。
四宮166は,第三者は,登記がない限り,原所有者からの譲受人に対抗し得ないとし,これが判例の立場の前提であるとする(四宮167)。
なお,引用に係る最高裁判所昭和42年10月31日判決・民集21巻8号2232ページは,第三者に登記があるものの,相手方・第三者間譲渡の後,登記の移転の前に,原所有者からの譲受人により処分禁止の仮処分がされている事案について,原所有者の譲受人が勝訴したもの。
昭和42年最判解説508は,「まさに民法177条を解釈する際の最も典型的なケースであって,(中略)お互に民法177条の第三者であるから,登記なくして他に自己の所有権取得を対抗できないこと,火を見るよりあきらかであろう」とする。