法律

□民法総則
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《心裡留保》

【文献】
教材   法務総合研究所・民法総則(第六版)
我妻T  我妻榮・新訂民法総則(民法講義T)
四宮   四宮和夫・民法総則(第四版)
内田T  内田貴・民法T第3版・総則・物権総論

【条文】
(心裡留保)
93条
 意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない。ただし,相手方が表意者の真意を知り,又は知ることができたときは,その意思表示は,無効とする。

1 意義(教材95)

心裡留保=表意者が,表示行為に対応する真意のないことを知りながらする単独の意思表示
※真意のないことを知らない→錯誤(95条)
※単独の意思表示ではない→通謀虚偽表示(94条)

2 効果(教材95)

(1)相手方のない単独行為→有効
(2)相手方のある意思表示→相手方が悪意又は有過失でない限り,有効。
(3)一定の事実の存在を前提とする行為について,その前提たる事実を欠くときは,たとえ,本人が悪意であっても,無効である(大審院昭和16年3月11日判決・民集20巻176ページ(債権譲渡がないのに,それを通知した事案))。

3 「相手方が表意者の真意を知り,又は知ることができたとき」(四宮161,教材95)

基準時=相手方が意思表示を了知した時点
証明責任=無効を主張する側が負担

4 適用範囲(四宮161以下,教材95)
・身分法上の法律行為
 →適用されない=常に無効(最高裁判所昭和23年12月23日判決・民集2巻493ページ)。
・代理人または法人の理事・取締役が権限を濫用して自己の利益のために代理行為をした場合に関し,本条但書の精神を援用して,相手方が権限濫用を知り,又は,知りうべかりし場合には,本人は無効を主張しうるとする(最高裁判所昭和38年9月5日判決・民集17巻909ページ,最高裁判所昭和42年4月20日判決・民集21巻697ページ)。

5 第三者との関係(教材95)

通謀虚偽表示と異なり,第三者を保護する規定はないが,94条2項を類推して,この無効は,善意の第三者に対抗し得ないと解するのが通説である(我妻288,四宮161)。
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