法律

□民法総則
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《失踪宣告》(1)

【文献】
教材   法務総合研究所・民法総則(第六版)
我妻T  我妻榮・新訂民法総則(民法講義T)
注釈(1)谷口知平・石田喜久夫編・新版注釈民法(1)総則(1),なお,引用に係る部分は,谷口知平執筆
四宮   四宮和夫・民法総則(第四版)
加藤T  加藤雅信・新民法体系T民法総則第2版
内田T  内田貴・民法T第3版・総則・物権総論
石田   石田穣・民法総則

【条文】

(失踪の宣告)
30条
1項 不在者の生死が7年間明らかでないときは,家庭裁判所は,利害関係人の請求により,失踪の宣告をすることができる。
2項 戦地に臨んだ者,沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が,それぞれ,戦争が止んだ後,船舶が沈没した後又はその危難が去った後,1年間明らかでないときも,前項と同様とする。

(失踪の宣告の効力)
31条
前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に,同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に,死亡したものとみなす。

(失踪の宣告の取消し)
32条
1項 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは,家庭裁判所は,本人又は利害関係人の請求により,失踪の宣告を取り消さねばならない。この場合において,その取消しは,失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2項 失踪の宣告によつて財産を得た者は,その取消しによつて権利を失う。ただし,現に利益を受けている限度においてのみ,その財産を返還する義務を負う。

第1 失踪宣告制度の概要(注釈375以下)

生死不明の長期の者に,“その住所地を中心とする法律関係を処理するため”死亡したものとみなす効果を生ずる制度をいう。

利害関係人により不在者の所在地の家庭裁判所に申し立てることによって開始され,家庭裁判所は,生存や異時死亡の証明をなす者がなく,生存について心証を得ないかぎりは,死亡につき確信を得なくても,裁量の余地なく宣告審判をしなければならない。

失踪宣告審判が確定したときは,新しい音信があったことが明らかになったような場合でも,異時死亡を理由とする失踪宣告の取消しをしなければならない。

死亡の効果を生じせしめるというのは,権利能力を剥奪するという意味ではなく,失踪者の最後の居住地において存在していた身分上・財産上の法律関係及びその継続と認められる関係について,死亡したものと同様の効果を生ぜしめることである。

したがって,死亡した者とみなされた不在者は,新しい居住地において,新しく身分上・財産上の法律関係を形成して生活することは可能である。

【問題】行方不明となった者の債権者が,失踪期間満了の後,失踪宣告のある前に債務者の残留財産に強制執行した場合,この強制執行の効果は,どうなるか。(我妻T108,注釈387)

失踪宣告の効果は,失踪期間満了時(あるいは,危難などの去ったとき)に遡り,相続人を債務者として失効すべきであったことになるから,無効である。

【問題】失踪宣告によって婚姻が解消した生存配偶者の再婚に関しては,再婚禁止期間の規定(733条1項)は適用されるか。(注釈389)

適用されない(大正7年9月3日民第1735号法務局長回答)。
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