法律

□不法行為法
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第4 行為の違法性(1)

1 「他人の権利又は法律上保護されうる利益を侵害」

(1)意義
 不法行為の成立にとり重要なのは、法規違反の有無なのであって、権利侵害は、違法性の徴表にすぎないのである(SW(藤岡執筆部分p.232)から、七〇九条にいうところの「権利の侵害」とは「違法性」と読み替えるべきである。
したがって,不法行為が成立するには、法律上の具体的な権利の侵害があった場合にとどまらず、その侵害に対して不法行為による救済を与えることが、必要だと考えられる利益の侵害があれば足り、また、公序良俗違反の有無の考慮も要すると解すべきである。このような観点からすれば、不法行為の要件であるところの違法性の有無は、@被侵害利益の性質とA侵害行為の態様を相関的に判断し,B公の秩序善良の風俗を標準として決定すべきであると解する(相関関係説。※なお,Bを要件として掲げるものとして我妻ほかコメ1316〜1317頁)。

(2)財産権の侵害
ア 所有権(我妻ほかコメ1317頁)
所有権を侵害された者が,その侵害の排除を請求することが所有権の濫用となる場合について,損害賠償を請求できるかが問題となる。
結論としては,不法行為を理由として物質的ならびに精神的損害の賠償を請求することは必ずしも否定されない。
掃海することが権利の社会性と個人性とを調和させることにつながるからである。

イ 債権――債権侵害

(ア)債務者が本旨に従った履行をしないこと
違法ではあるが,それは,債務不履行として,不法行為と区別される。
したがって,債権の侵害が不法行為の問題となるときは,債権が第三者により侵害された場合である。
なお,債務者の行為が,債務不履行の要件を満たすと同時に,不法行為の要件を満たす場合も多い。
この場合は,債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権が併存し,債権者は,そのいずれかを選択して行使することができる(法条競合論)。

(イ)債権が第三者により侵害された場合

a 不法行為の成否(積極)
積極的に解するのが判例(大審院大正4年3月20日判決・民録21輯395頁)である。
問題は,どういう場合に債権侵害が不法行為になるかである。

b 債権侵害の類型(我妻ほかコメ1318〜1319頁)
A 第三者のために債権者がその債権を喪失させられた場合
(A)債権の帰属の侵害
(B)給付の侵害
B 給付の侵害の場合において,第三者の行為だけでなく,これに債務者自身の責めに帰すべき事由も加わっている場合

c 債権の帰属の侵害
以下の場合は,いずれも,債権者をして債権を喪失させる行為であるから,不法行為になる。
・第三者が無記名債権者から預かった無記名証券を善意の第三者に譲渡してしまう行為(192条の即時取得成立)→肯定
・債権者から取立て委任のために債権譲渡を受けたに過ぎない債権を善意の譲受人に譲渡し,債務者の意義をとどめない承諾を受けてしまう行為→肯定
・債権の淳占有者または受取証書の持参人として善意弁済を得てしまう行為→肯定
・Aが担保の目的でCからBに対する債権の代理受領の委任を受け,Bがそれを承認しながら,Cに弁済してしまったためにAが損害を被った場合につき,BのAに対する不法行為になる(最高裁判所昭和44年3月4日判決・民集23巻561頁,同旨最高裁判所昭和61年11月20日判決・判時1219号63頁)。

d 給付の侵害
以下の場合,いずれも債務者に対する債権が消滅し,もしくは無価値になれば,あたかも帰属の侵害と同様,債権者は財産を奪われたことになるから,不幸行為になる。
・第三者が,債務者が債権者に移転するべき特定物を毀損(損傷)する行為(大審院刑事部大正11年8月7日判決・刑集1巻410頁)
・契約通りに劇場に出演しようとする債務者を拘束する行為(大審院大正7年10月12日判決・民録24輯1954頁)
・債務者が債務額100万円を持参して債権者に弁済しようとしたのを妨害し,翌日債務者が破産して,債権者が弁済をうけられなくなるに至らせた行為(我妻ほかコメ1319頁)じさんんをがするとする
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