法律

□不法行為法
6ページ/11ページ

第2 故意又は過失(3)

7 危険行為
問 とくに,危険を伴う特殊な技術を要する事項については,危険防止のために法令上種々の処置が命じられていることがあるが,これに従わないことと,不法行為上の過失との関係を述べよ。

答 交通法規等の危険防止のための法令上の処置に違反した場合,原則として過失が認められる(我妻・有泉コメ1305頁)。
しかし,これに従ったからといって,過失がないということはできない(大審院大正5年1月22日判決・民録22輯113頁,最高裁判所昭和45年1月27日判決・民集24巻56頁等)。

問 自動車の運転行為による不法行為責任について,留意すべき事柄を述べよ。
答 参照:我妻・有泉コメ1305頁
(A)自動車損害賠償保障法
自動車損害保障法施行後は,運行供用者及び運転者の過失は,主として3条の免責事由について問題となるのみ。
(B)信頼の原則
自動車運転者は,他の車も交通法規通り運転するものと信頼して走行することができる。
・左側を並進する二輪車が交通法規に反して進路を見に変えて接触した事故について,直進している自動車は,それを予期して徐行する義務はない(最高裁判所昭和43年9月24日判決・判時539号40頁)。
・優先通行権のある者に徐行義務はない(最高裁判所昭和45年1月27日判決・民集24巻56頁)。
・交差点で青色で直進する自動車に対向車が右折して衝突した事案(最高裁判所平成3年11月19日判決・判例時報1407号64頁)

8 公共交通機関(我妻・有泉コメ1305頁)
航空機・電車・自動車は,危険を伴うとともに社会公共の福祉を向上させる不可欠の施設であるから,一般人もまた,その危険を回避するために相当の注意を要求され,これらの施設の従業員の過失は,これと相関的に判断されるべきである(大審院大正15年12月11日民集5巻833頁)。

9 故意・過失の認定
(1)189条2項による悪意の擬制
189条2項による悪意の擬制は,その趣旨が異なるので,これによって709条の故意・過失が擬製されるわけではない(大審院昭和18年6月19日民集22巻491頁)。
(2)債権者の強制執行に対し,債務者または第三者が,第三者の所有物であると主張したとき
対立する裁判例がある。
(A)債務者または第三者が,証拠資料を提出しなかったときは,債権者の過失はないとされた(最高裁判所昭和30年2月11日判決・民集9巻164頁)。
(B)債権者の調査不十分として,その過失を認めた(最高裁判所昭和30年11月25日判決・民集9巻1852頁)。
(3)本件の訴えの反訴
物を自己の物と信じて占有していた者が本件の訴えで敗訴したからといって,直ちに故意・過失があるとはいえない(最高裁判所昭和32年1月31日判決・民集11巻170頁)。
(4)その他
ア 仲介業者が山林の売買に当たって保安林指定の有無を調査しなかったために,買主が分譲地の造成の回復を命じられたり,分譲地が売却できなくなったのは,仲介業者の過失とされた(最高裁判所昭和55年6月5日判決・判時978号43頁)。
イ 闘犬の買い主に場所を提供したBが,保管方法が不十分で,その使用人が闘犬を連れだしてAに対して起こした事故について,Bの果たすべき高度の注意義務を根拠として,Bの本条による責任を認めた(最高裁判所昭和57年9月7日判決・民集36巻1572頁)。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ