法律

□不法行為法
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第2 故意又は過失(失火責任法等)

6 失火の責任に関する法律

失火によって損害を加えたときは,「失火ノ責任ニ関スル法律」により,重過失のあるときにのみ責任を負うべきものとされる。

(1)失火が債務不履行に該当するときはどのように扱われるか。
失火の責任に関する法律は,不法行為の責任を制限するだけで,債務不履行の責任を制限するものではない。
したがって,借家人が,軽過失で,隣家を延焼させた場合,隣家の所有者及び使用者に対する不法行為に基づく責任は免れるが,家主に対する債務不履行責任を免れることはできない(大審院連合部明治45年3月23日判決・民録18輯315頁)。

(2)火災の発生原因
失火による加害とは,誤って火事を出し,火力の単純な燃焼作用で財物を損傷・滅盡させることをいう(我妻・有泉コメ1304頁)。
したがって,発火薬の爆発作用による損害などを含まない。

問 延焼中に火薬が爆発して損害を拡大したとき,失火の責任に関する法律は適用されるか。
答 適用される(大審院大正2年2月5日判決・民録19輯57頁)。

問 高圧電線の架設設備が不十分なために,電線と樹木とが接触して火花を散らして火災を起こした場合,失火の責任に関する法律が適用されるか。
答 適用される(大審院昭和7年4月11日判決・民集11巻609頁)。
※この判決は,717条との関係上,当否は疑問とされる(我妻・有泉コメ1305頁)。

(3)使用者責任との関係
問 失火者の使用者責任を認めるにあたり,被用者,使用者それぞれに対し,いかなる過失・重過失が認められるべきか。
答 被用者の重過失は必要であるが,使用者の重過失は必要ない(我妻・有泉コメ1305頁)

(4)責任無能力者の監督者の責任
問 失火者の監督者の責任を認めるにあたり,監督者に対しては,いかなる過失が認められるべきか。
答 監督者に重過失が認められる必要がある(我妻・有泉コメ1305頁)。

(5)故意の放火
故意の放火は,失火ではないので,失火の責任に関する法律は適用されず,709条による(我妻・有泉コメ1305頁)。
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