法律

□不法行為法
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第2 故意又は過失(1)

1 制度趣旨
:近代法は、個人意思の自由を尊重することを理想としているから、個人に損害を負担せしめるについても、損害の原因たる事実がそのものの意思活動に基づかなければならない

2 故意
論点:故意の認識対象
結論:客観的に違法とされる事実(=権利侵害の事実)(最判昭32.3.5.)
∵行為抑止に十分な認識

3 過失
論点:注意義務の程度
結論:善管注意義務=当該業務の性質に照らし、危険防止のために実際上必要とされる最善の注意義務
※具体的場合における行為の性質、行為者の職業等を考慮し信義則の要求するところにしたがって定める

論点:だれかに損害を与えることが予見できたものの,特定の人に損害を与えることまで予見できなかったとき,過失は認められるか。
結論:積極(最高裁判所昭和32年3月5日民集11巻395頁)

論点:責任能力はあるものの,未成年者である場合,過失はどのように判断されるか。
結論:責任能力がある以上,年少者であっても,その注意義務の程度は大人のそれと同一である(大審院大正4年5月12日民録21輯692頁)。

4 挙証責任
論点:故意・過失の挙証責任
結論:被害者
∵法律要件分類説(∵基準の明確性)

論点:裁判官は,原告の故意の主張に対し,過失を認定することができるか。
結論:積極(大審院明治40年6月19日判決・民録13−685)。
民法では,故意と過失との間で責任を区別しておらず,その差異はさほど重要ではないから。

論点:原告が,故意の主張をしたものの,その立証ができなかった場合,裁判官は,過失の有無についての判断をすることなく,請求を棄却することができるか。
結論:消極(大審院昭和5年9月19日判決・新聞3191号7頁)


5 故意過失の主張例
 故意過失とは、客観的に違法とされる事実の発生を知り、または、知りうべきでありながら、結果発生を防止する措置をとらず、行為をすることをいう。
 単なる心理状態を問題としないのは、危険はありながらも社会的に有用な行為が広く抑止されるのを防ぐためである。
 したがって、結果発生を知りうべきだったときでも結果回避のための措置をとれば、過失はないと解する。
 また、結果に対する予見可能性がないときでも、行為が取締法規・不法行為規範の要求する行為態様に違反することに故意過失があれば、足りると解するべきである。
 このような場合は、類型的に危険とされる行為の抑止による事前防止の要請が働くからである。
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