法律

□不法行為法
11ページ/11ページ

行為の違法性(4)

2 侵害行為の態様 
(1)刑罰法規違反行為
不法行為の要件としても違法性を帯びる(我妻ほかコメ1325頁)。
(2)取締法規違反行為
銀行の取締役が虚偽の営業報告及び貸借対照表を新聞紙に公告したために,銀行を不当に信用してこれと取引をし,損害を被った者を生じた場合,その行為は不法行為としての違法性を帯びる(大審院明治45年5月6日判決・民録18輯454頁)。
神戸市における台湾産バナナの独占的仲買人が,その組合に加入しない特定の青果卸小売商人に対して取引を拒絶する決議をした事案につき,不法行為の成立を認めた(大審院昭和15年8月30日判決・民集19巻1521頁)。
(3)公序良俗違反
「不当に」または「不正に」損害を加える行為として,不法行為の成立が認められる(我妻ほかコメ1326頁)。
(4)権利濫用行為
権利も公共の福祉に従うべきものであり,その濫用行為は違法性を帯びる。
・土地所有者が,不法占拠者に対する家屋除去土地明渡請求権について,家屋所有者は損害賠償請求権を取得し,抵当権者は,これに物上代位できるとした(大審院大正6年1月22日判決・民録23輯14頁)。
・弁護士に対して根拠なく弁護士法58条1項に基づく懲戒請求をした行為は,違法な懲戒請求として不法行為を構成する(最高裁判所平成19年4月24日判決・民集61巻1102頁)。
(5)行政法上許された行為
企業者がその企業を営むについて行政上の許可ないし認可を受けても,その企業の業務遂行のために行われる個々の行為がすべて当然に違法性を欠くに至るものではなく,当該企業の運営に必要な十分の施設をなさずに他人に損害を加えることは違法である。
(6)裁判や執行に関する行為
不当な訴訟の提起は,不法行為になりうる(大審院民事・刑事連合部昭和18年11月2判決・民集22巻1179頁)。
この場合,「提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであるうえ,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば,容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」に限られるとしている(最高裁判所昭和63年1月26日判決・民集42巻1頁)。
AとBが乗車していた自動二輪車の交通事故で死亡したAの相続人が,捜査機関の認定に反することを知りながら,Bが運転していたことを主張して起こした損害賠償請求訴訟の提起は,違法ではない(最高裁判所平成11年4月22日判決・判時1681号1102頁)。
文書を偽造して裁判所を欺き,確定判決をえて,これに基づいて強制執行をして債務者に損害を与えるような行為は,不法行為になる(最高裁判所昭和44年7月8日判決・民集23巻1407頁)。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ