法律

□不法行為法
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行為の違法性(3)

(4)親族関係に関する侵害
ア 民法711条
他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合においても,損害の賠償をしなければならない。

イ 近親者の範囲
(ア)原則論
「父母」,「子」には,実親子のほか,養親子関係を含む。
旧々民法における継父母,嫡母は含まない。
「配偶者」には,内縁の配偶者を含まない(大審院昭和7年10月6日判決・民集11巻2023頁)。
(イ)その拡張
a 扶養請求権侵害構成
本条所掲の以外の扶養義務のある者で,かつ,その者の死によって不要請求権を侵害される事情がある者については,扶養請求権の侵害を理由として,損害賠償請求ができる(我妻ほかコメ1354頁。内縁の夫婦及びその間の子について,肯定したものとして,大審院昭和7年10月6日判決・民集11巻2023頁)。
b 711条類推適用
被害者の夫の妹が歩行の不自由な身体障害者であったため,長年にわたり被害者と同居し,その庇護のもとに生活を維持してきたという事案について,妹が被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたことを,認め,本条を類推適用して慰謝料請求を認めた(最高裁判所昭和49年12月17日判決・民集28巻2040頁)。
以上のように,民法711条に定める近親者以外のどの範囲の近親者まで慰謝料を認めるか,事案によりけりである(岡口・マニュアル下169ページ)。

ウ 近親者の身体障害
身体障害を受けた娘の母が,その子の死亡にも比肩しうべき,精神上の苦痛を受けたと認められる場合について,母が自己の権利として慰謝料を請求しうることとした(最高裁判所昭和33年8月5日民集21巻61頁)。
なお,前記判例は,適用すべき法律として,709条及び710条を掲記している。
また,その後の裁判例は,事案に応じて,肯定例,否定例いずれもあるが,傷痕や機能障害の程度で判断が分かれているとされる(我妻ほかコメ1355頁)。

エ 扶養利益の喪失による損害額の算定
「相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく,扶養者の生前の収入,そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分,被扶養者生前の収入,そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分,被扶養者各人につき被扶養利益として認められるべき比率割合,扶養を要する状況が存続する期間などの具体的事情を適正に算定すべき」(最高裁判所平成12年9月7日判決・判時1728号29頁)。
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