法律

□租税法雑記帳
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《申告と増額更正処分》(司法研修所編・租税訴訟の審理について(改訂新版)18ページ以下)

【更正】

税務署長は,納税申告書の提出があった場合において,その納税申告書に記載された課税標準又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは,その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する(通則法24条)。

税額を増加させる更正を増額更正という。

税額を減少させる更正を減額更正という。

また,税務署長は,納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合には,その調査により,当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する(通則法25条)。

税務署長は,更正又は決定をした後,その更正又は決定をした課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知ったときは,その調査により,当該更正又は決定に係る課税標準等又は税額等を更正する(通則法26条)。これを再更正という。

再更正は何度も繰り返して行うことができる。

更正又は決定を行うことができる期間には制限がある(通則法70条,71条)。

【青色申告者に対する更正】

@原則として,その者の帳簿書類を調査した上で行わなければならない。
A更正通知書には更正の理由を附記しなければならない(所得税法155条,法人税法130条)。
B推計課税による更正を行うことができない(所得税法156条,法人税法131条)。

したがって,推計課税を行う前提として青色申告承認を取り消すことが行われる。

【申告と増額更正との関係】(大野重國ほか・租税訴訟実務講座〔改訂版〕179ページ以下)

吸収説に立って処理をする。

すなわち,申告後に増額更正処分が行われると,申告は,これによって生じた効果を維持するについてすでに独立の存在意義を失っており,増額更正がその内容に申告の内容を含むことによって,申告の効果を維持しているという関係にあると理解できる。

申告税額部分については,税額確定効が生じず,これは,申告の効果によって妨げられていることによる。

そこで,訴訟上は,独立の存在意義を失った申告ではなく,申告をその内容に含む増額更正の取消しによって併せて申告の効力も失わせることができるものと解すべきことになる。

この場合,申告の効果がなくなるわけではないので,申告を行ったことに伴う効果は消滅しない。

訴訟上吸収説によって理解することにより,申告による税額確定の効力と税額更正の公定力の間の定職関係が生じないことの説明ができ,訴訟上の観点からも,申告が無効であることを前提とする租税債務不存在確認訴訟や過誤納金変換請求訴訟の判決の効力と増額更正の公定力あるいは増額更正取消訴訟の判決と申告による増額の確定効との間に抵触を生じないことになる。

なお,増額更正がなされた場合に,納税者自身が,申告額を超えない部分の取消を行うことに打っての利益は認められない(神戸地方裁判所昭和54年11月9日判決・訟務月報26巻2号340ページ等)。なぜなら,申告額までの税額を自らの確定申告行為によって確定しているからである。
納税者が,申告額を下回る税額の取消しを求めるためには,更正の請求の排他性により,更正の請求の手続を経る必要がある。
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