法律

□租税法雑記帳
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【納税保証制度の概要】

1 国税の担保としての保証人の保証(納税保証)及びその担保提供手続について

換価の猶予(徴収法151条)を始めとする納税緩和制度においては,その猶予に係る税額が50万円以下である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合を除き,担保の提供が求められている(通則法46条5項,徴収法152条参照)。
そして,国税に関する法律の規定により提供される担保の種類は,通則法50条各号に限定列挙されており,同条6号は,「税務署長等が確実と認める保証人の保証」を挙げ,これを担保として提供しようとする者は,税務署長等に対し,保証人の保証を証する書面(保証書)を提出する(通則法施行令16条3項)ほか,担保を提供する旨の書面(担保提供書)及び保証人の印鑑証明書を併せて提出するものとされている(通則法基本通達54条関係1)。

2 納税保証契約の成立時期

納税保証契約の成立時期については,換価の猶予(徴収法151条)に係る担保が保証人の保証である場合,当該保証契約は,税務署長等が保証人から保証契約の申込みをされただけで成立するものではなく,税務署長等が財産の換価の猶予を決定したことによって成立すると解されている(東京高等裁判所平成3年7月17日判決(平成3年(行コ)第29号・公刊物未登載)及びその第一審である東京地方裁判所平成3年1月31日判決(平成元年(行ウ)第151号・公刊物未登載)参照。なお,上記高裁判決は,その上告審である最高裁判所平成4年1月24日第二小法廷判決(平成3年(行ツ)第216号・公刊物未登載)により維持されている。)。

3 保証人と主たる納税者との関係

納税保証契約における国税の保証人は,納税者の納付すべき国税につき保証債務を負う者,すなわち主たる債務者である納税者が国税を納付しない場合に,これに代わって納税義務を負う者をいい,納税者との契約関係に基づいて国に対し任意に保証債務を負うものとされ(志場喜徳郎ほか編「国税通則法精解〔平成19年改訂〕」(以下「通則法精解」という。)123ページ参照),民法の保証債務に関する規定の類推適用されると解されている。そして,当該保証債務は,主たる納税義務との関係で,附従性及び補充性をもつとされる(前掲通則法精解・522ページ,浅田久治郎ほか共著「租税徴収実務講座〔改訂版〕3特殊徴収手続」(以下「徴収実務講座」という。)158ページ参照)。

4 保証人からの徴収手続(担保の処分)について
担保の処分について,通則法52条1項は,税務署長等は,担保の提供されている国税がその納期限(滞納処分に関する猶予に係る期限を含む。)までに完納されないときは,保証人にその国税を納付させる旨規定し,同条2項は,税務署長等は,同条1項の規定により保証人にその国税を納付させる場合には,その者に対し,納付させる金額,納付の期限,納付場所その他必要な事項を記載した納付通知書による告知をしなければならない旨規定している。
そして,同条4項は,同条1項の場合において,保証人がその納付すべき金額を完納せず,かつ,当該担保を提供した者に対して滞納処分を執行してもなお不足があると認めるときは,保証人に対して滞納処分を執行する旨規定し,同条5項は,同条4項の規定により保証人に対して滞納処分を執行する場合には,税務署長等は,当該担保を提供した者の財産を換価した後でなければ,その保証人の財産を換価に付することができない旨規定している。
なお,保証人に対する徴収手続は,その納税義務の補充性を考慮し,上記のとおり滞納処分開始要件及び換価制限について特別な定めがされていることから,民法452条及び453条の催告及び検索の抗弁権に関する規定の適用はないと解されている(前掲通則法精解・523ページ,前掲徴収実務講座・158ページ参照)。
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