法律

□諸法
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【国立大学法人法における文部科学大臣の指導・監督権限の概要】

1 国立大学法人法制定の趣旨及び目的

国立大学法人法(平成15年法律第112号)1条は,「大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに,我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため,国立大学を設置して教育研究を行う国立大学法人の組織及び運営並びに大学共同利用機関を設置して大学の共同利用に供する大学共同利用機関法人の組織及び運営について定めることを目的とする。」と規定する。

また,その制定に当たっては,「学問の府としての特性を踏まえた大学の自主性・自律性を尊重するとともに,各大学における運営上の裁量を拡大していくことが必要」であることなどを前提とし,「個性豊かな大学づくりと国際競争力ある教育研究の展開」,「国民や社会への説明責任の重視と競争原理の導入」及び「経営責任の明確化による機動的・戦略的な大学運営の実現」との視点から,法人化後の国立大学像が検討されていたとされる(「新しい「国立大学法人」像について」5ないし8ページ)。

さらに,同法は,「大学が学問や文化の継承と創造を通じ社会に貢献していくことが極めて重要」になっている状況を踏まえ,国の機関として位置づけられていた国立大学等を法人化し,「自律的な環境のもとで国立大学をより活性化し,すぐれた教育や特色ある研究に積極的に取り組む個性豊かな魅力ある国立大学を育てることなどをねらい」として制定されたものである(「平成15年4月3日衆議院文部科学委員会における当時の遠山文部科学大臣の趣旨説明」1枚目)。

2 文部科学大臣の国立大学法人に対する規制権限に関する規定

国立大学法人は,前記(ア)記載のとおり,大学の自主性・自律性を尊重し,運営上の裁量を拡大し,運営体制の整備を図ることによって,国立大学が高等教育及び学問水準の向上等の役割を一層しっかりと果たしていくことを目的として平成16年に法人化されたものであり,その運営に当たっては,国の関与を最小限にし,法人の自主性,自律性を十分に発揮することができるようにすることが求められている(準用通則法(国立大学法人法35条において準用する独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)をいう。以下同じ。)3条3項)。

さらに,国立大学法人については,日本国憲法23条において,学問の自由,大学の自治が保障され,教育基本法(平成18年法律第120号)7条2項において,「大学については,自主性,自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」と規定されていることに加え,国立大学法人法3条において,国立大学等の教育研究の特性に常に配慮するものとしていることから,独立行政法人よりも一層,自主性,自律性を尊重することが求められている。

そして,文部科学大臣の国立大学法人に対する権限は,学長及び監事の任免(国立大学法人法12条及び17条。なお,学長の任免に関しては,学長に同法16条1項の欠格事由が認められる場合を除き,各国立大学法人の経営協議会及び教育研究評議会から選出された委員で構成される学長選考会議による申出に基づいてなされる(同法12条1項及び2項並びに同法17条4項)。),出資業務に対する認可(同22条2項),中期目標の策定と中期計画の認可(同法30条及び31条),積立金の処分に関する承認(同法32条)及び長期借入金並びに債券等に関する認可(同法33条及び34条)等に限られる。

また,国立大学法人は公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業を担い,その業務の安定的な実施が要請されるため,文部科学大臣は,必要と認めるときには,国立大学法人に対し,その業務等の状況に関し報告をさせ,又は事務所への立入検査等を行うことができ(準用通則法64条1項),また,国立大学法人等又はその役職員の行為が国立大学法人法その他の法令に違反し,又は違反するおそれがあると認めるときには,当該法人に対し,当該行為の是正のため必要な措置を講ずることを求めることができるとされる(準用通則法65条1項)。
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