法律

□民事訴訟法雑記帳
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《総説》
問 「当事者能力」とは何か。



答 訴訟上の請求定立の主体又はその相手方となり,また,判決の名宛人となりうる資格をいう。



問 当事者能力は,原則として,何によって決定されるか。



答 原則として民法の権利能力を基準に決められる(28条)。
 したがって,民法上の

[A]自然人

[B]法人

には,原則として当事者能力が認められる。



《自然人》
問 自然人の当事者能力の発生,消滅の理由は何か。



答 自然人の権利能力は,出生により始まり,死亡によって消滅する。
 したがって,自然人には死亡しない限り当事者能力が認められる。



問 出生前の自然人であっても,当事者能力が認められる例を挙げよ。



答 出生前の胎児であっても
[A]不法行為に基づく損害賠償(民法721条)
[B]相続(民法886条1項)
[C]受遺贈(民法965条)
には,権利能力が認められる。
したがって,これらの場合には,胎児であっても,訴訟能力が認められる。



問 胎児を当事者とする訴訟の実際の訴訟行為は誰が行うのか。



答 出生後に法定代理人となる者によって行われる。



問 胎児が結局死産してしまった場合はどのように取り扱われるか。



答 死産の場合は,権利能力に関する例外規定は適用されない(民法886条2項)。
 したがって,係属中の訴えは,当事者の不存在を理由として却下され,判決は無効として取り扱われる。



《法人》
問 法人の当事者能力の発生消滅時期はいつか。



答 設立の登記(一般法人22条,163条,会社法49条,579条)などによって発生し,解散によって消滅する。



問 解散法人は,解散時点で当事者能力を失うのか。



答 精算の結了まで存続する。
 解散法人も清算の目的の範囲内では存続するものとみなされ(会社法476条,645条,破産法35条),また継続することができる(一般法人150条,204条)からである。



問 当事者能力が消滅する精算結了時点とは,具体的にいかなる時点か。



答 精算結了の登記がなされた時点である(大判昭和8年12月13日法学3巻5号563頁)



問 精算結了の登記がなされたが,実際には,会社財産が残っていた場合は,どのように取り扱われるか。



答 会社財産が残っていれば,法人格は消滅しない(大審院判決大正5年3月17日民録22輯64頁)。
 したがって,当事者能力も残る。



問 法人の機関について,機関たる地位に基づく当事者能力は認められるか。



答 認められない。



問 「国」に当事者能力は認められるか。



答 認められる。
 国庫として実体法上の権利義務の主体となり,また,国家賠償責任の主体ともなりうるから。



問 行政権の主体としての国についても,当事者能力が認められるか。



答 認められる(行政事件訴訟法11条1項,3項,38条1項等)。



問 外国及び外国法人には当事者能力が認められるか。



答 認められる(民法35条2項本文)。



問 地方公共団体には当事者能力が認められるか。



答 認められる(地方自治法2条1項)。



問 行政庁には,当事者能力が認められるか。



答 通常の民事訴訟では認められない。
しかし,行政訴訟においては当事者能力が認められる(行政事件訴訟法11条2項,38条1項)。


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