法律

□刑事証拠法ノート
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第6 証明

 一般に証拠によって,裁判官がある事実について心証を抱くことをいう。

1 裁判官の心証の程度
@ 確信=合理的な疑いを生ずる余地のない程度に真実であるとの心証
A 証拠の優越=肯定証拠が否定証拠を上回る程度の心証
B 推測=一応確からしいという心証
※ 疎明=多分確かであろうという心証

2 厳格な証明と自由な証明
 厳格な証明とは,刑事訴訟法の規定により証拠能力が認められ,かつ,公判廷における適法な取り調べを経た証拠による証明のことをいう。
 犯罪事実,処罰条件・処罰阻却事由については厳格な証明がいる。
 刑の加重減免事由のうち,累犯前科,刑の減免事由(未遂,従犯,心身耗弱等)は厳格な証明を要するが,単なる情状は自由な証明で足りるのが一般的である。

3 証明を要しない事実

@ 法規,経験則
A 公知の事実
 通常の知識経験を持つ人が疑いを持たない程度に,一般に知れ渡っている事実
B 推定事実
 一定の事実が証明されたときは,証明を用いず一定の他の事実を認定することをいう。

4 挙証責任
@ 客観的(実質的)挙証責任=証明の必要がある事実について,その存否がどちらとも判然としない場合に,だれが不利益を受けるかということ
A 主観的(形式的)挙証責任=手続上実際に証拠を提出しなければならない責任
 実質的挙証責任を事項により,検察官,被告人のどちらに負わせるべきかという問題を挙証責任の分配という。
 刑事訴訟法では,「疑わしきは罰せず」とか「疑わしきは被告人の利益に」という法格言や,「無罪の推定」の法理が支配しており,証明を要する事実の大部分の挙証責任は,検察官が負う。
 犯罪の構成要件に該当する事実,処罰条件である事実,法律上刑の減免理由となる事実の存在についても全て検察官に挙証責任がある。
 違法性阻却事由,責任阻却事由,処罰阻却事由,法律上の刑の減免理由となる事実の不存在についても検察官に挙証責任があるが,これらの事実の不存在は事実上推定されるので,被告人側の立証によってその推定が破られた場合にだけ立証すればよい。
 検察官が提出した証拠の証拠能力についても検察官が挙証責任を負う。
 例外的に被告人が負担する場合は,名誉毀損罪について事実が真実であることの証明(刑法230条の2),同時傷害(刑法207条)の場合の傷害の軽重,事故が傷害を生ぜしめたものでないことの証明等が挙げられる。 
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