法律

□刑事証拠法ノート
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第4 自白

自分の犯罪事実を認める被告人の供述のこと

1 自白法則
 任意性のない自白ついて証拠能力を否定する証拠法の建前のこと(憲法38条2項,刑事訴訟法319条1項)。
 任意性のない自白が証拠とならない実質的な根拠は,虚偽排除と人権擁護にあると解するのが通説。 

2 任意性のない自白の具体例
(1)強制,拷問又は脅迫による自白
 肉体的または精神的な苦痛を与える強制行為すべてを含む。
 暴力による自白(時間的近接性があれば因果関係は推認される。),両手錠は任意性に疑いが生じる,片手錠は他に格別の事情がない限り任意性にうたがいが生じない,正座の強制は任意性を疑わしめる一資料となる等。
(2)不当に長く抑留又は拘禁された後の自白
 「抑留」も「拘禁」も身体の拘束のことであるが,前者は短期間,後者は長期間の拘束をいう。
 「不当に長く」とはどの程度を指すのかを一律に決めることは困難である。
 虚偽排除及び人権擁護双方の観点に立って,具体的事件の性質,勾留の必要性など客観的事情と被告人の年齢,健康状態など主観的事情を総合して判断することになる。
(3)その他任意性に疑いのある自白
 利益約束(自白をすれば起訴猶予にすると検察官に言われてした自白等),捜査機関が偽計を用いてした自白,病中の自白(捜査機関がその状態を作り出しもしくはこれを利用して取り調べをしたというような事情がある場合)等。

2 補強規則
 被告人は,自白しか証拠がない場合有罪とされず(憲38V,刑訴319U・V),有罪とするには,自白の外に外の証拠(補強証拠)が必要であるという原則を補強規則という。
 補強規則は,自由心証主義の唯一の例外である(最判昭33.5.28刑集12.8.1718)。
 補強規則の意義は,自白の偏重を避けることによって誤判を防止し,併せて間接的には自白の強要を防止することにある。
 証拠能力のある証拠であれば,いかなる証拠でも補強証拠になりうる(最判昭26.4.5刑集5.5.809)。
 自白は,自白の補強証拠足り得ない(最判昭25.7.12刑集4.7.1298)。
 補強法則の趣旨から考えて,自白から実質的に独立した証拠でなければ補強証拠足り得ないからである。
 補強証拠の必要な範囲について,判例は,自白の真実性を保障する程度の事実について補強証拠があれば足りると実質的に解している(実質説,最判昭23.10.30刑集2.11.1427)。
※ 補強証拠が必要ではない事実
@ 犯人性(最判昭30.6.22刑集9.8.1189)
A 犯罪の成立を阻却する事由の不存在(東京高判昭56.6.29判時1020.136)
B 主観的要素
※ 補強証拠が必要とされる範囲
 放火罪については,家屋焼失に関する補強証拠と自白に照応する点火の位置及び時間に関する火災発見者の供述で自白の補強証拠として欠けるところはない(最判昭32.10.4刑集11.10.2456)。
 補強証拠の証明力は,自白と相まって事実を証明できる程度であれば足りる(最判昭24.4.7刑集3.4.488)。
 被害届と自白との間に,犯罪の日時,被害物件の数量などに多少の相違があっても,被害届を窃盗の補強証拠とすることが出来る(最判昭24.7.19刑集3.8.1341)。
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