法律

□刑事証拠法ノート
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第3 伝聞証拠(2)

3 実況見分調書(※321V)

 捜査機関の検証の結果を記載した書面は,その供述者(作成者)が公判期日において証人として尋問を受け,その信性に作成されたものであることを供述したときは,証拠とすることができる(321V。
 真正に作成されたものであることの供述とは,間違いなく自分が作成したという供述(作成の真正)と,検証したところを正しく記載したという供述(記載内容の真正)を意味している。
 当事者は,上記の者の証言の機会に,合わせて記載内容についても,尋問をすることができる。
 本項の検証調書には,任意処分として行う検証の結果を記載した書面(実況検分調書)を含む(最判昭35.9.8刑集14.11.1437)。
 また,捜査機関に類似したものの作成した実況見分調書にも準用される。
 具体的には,消防吏員が作成した出火現場の実況見分の顛末を記載した書面(実況見分書)等がこれにあたる。

4 鑑定書(321W)
 裁判所または裁判官の命じた鑑定人の鑑定書の他,捜査機関から鑑定の嘱託を受けた者(223T)の作成した鑑定書にも同項が準用される(最判昭28.10.15刑集7-10-1934)。
 鑑定書は,検証調書と同様,鑑定人が公判期日において証人として尋問を受け,「作成の真正」を供述したときに証拠能力が認められる(321W,V)

5 被告人以外のものが作成した供述書又は供述録取書(321T)

(1)概要
 供述書とは,供述者が自ら作成した供述記載書面を言う。
 供述書には,署名指印はなくても良い。
 供述録取書とは,供述者の供述を他人が録取した書面のことを言う。
 供述録取書は,供述者の署名又は押印を必要とする。厳密に言えば,二重の伝聞であり,録取の正確性を保証する必要があるからである。
 上記の例外は,
@ 公判調書
 別に正確性を保証する規定があるから(51)
A 供述者が署名押印出来ない正当の理由がある場合で,しかも正確性を保障するほかの事情があるとき
 署名押印があるのと同一視して良いからである。
 このような文書については,321条T項所定の要件を備えた場合のみ,証拠となる。
 要件としては
@ 供述の再現不能:書面の供述者が死亡,精神もしくは身体の故障,所在不明もしくは国外にいるため公判準備もしくは公判期日において供述することが出来ないこと 
A 相反性:供述者が公判準備もしくは公判期日において書面中の供述と異なった供述をしたこと
B 特信性:書面の供述を信用すべき特別の状況のあること
C 不可欠性:書面の供述が犯罪事実の証明に欠くことが出来ないものであることがある。

A 裁判官の面前における供述録取書
→@またはA
B 検察官の面前における供述録取書
→@またはAおよびB
C その他
→@、BおよびC

(1)供述者の死亡,精神もしくは身体の故障などの供述の再現不能
→一時的な身体の故障や所在不明などは含まれない。
※供述することができないときに当たるそのほかの例(実務下p.130)
@ やむを得ない理由又は正当理由があって,出頭を拒否しているとき(東京高判昭50.3.6判時794-121)
 正当な理由のないときは,再召喚や勾引によって出頭を強制することができるから,この要件に該当しない(広島高判昭58.6.21判タ512-185)
A 宣誓拒否(仙台高判昭32.6.19高刑集10-6-508)
B 証言拒絶(最決昭44.12.4刑集23-12-1546等)
C 黙秘権行使(札幌高判昭25.7.10高刑集3-2-303)
D 記憶喪失(最決昭29.7.29刑集8-7-1217)
 単純に「覚えていない」というのは,次の相反性の問題となる。 

(2)相反性
 立証事項との関係で,公判準備若しくは公判期日の供述と検面調書記載の供述が,表現上明らかに矛盾しているか,若しくは表現自体としては矛盾しないように見えるが,前後の供述などを照らし合わせると,結局は異なった結論を導く趣旨の供述をいう。

(3)特信性
 特信性は,供述がなされた際の外部的な事情を基準として判断しなければならない(外部的付随事情説)が,この外部的事情を推知させる資料として,副次的には供述内容を参酌することも許される。
 321条1項2号の場合は,相対的特信性をいい。
 321条1項3号の場合は,絶対的特信性をいう。 

(4)不可欠性
 供述内容が犯罪事実の存否に関連ある事実に属する限り,その供述が,これが事実の証明につき実質的に必要と認められる場合のことをいう(東京高判昭29.7.24刑集7-7-1105)。
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