法律

□刑事証拠法ノート
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第3 伝聞証拠(1)

 伝聞証拠とは,事実認定の基礎となる体験を体験者自らが公判廷で供述せず,他の間接的な方法で公判廷に報告された証拠をいう。 
 そして,伝聞証拠は,原則として証拠になり得ないというこの法則(320T)を伝聞法則という。
 伝聞証拠が,証拠にならないのは,@供述証拠は,知覚―記憶―表現のそれぞれの過程に誤りが混入する危険を持っているので,供述証拠を証拠とするには,その内容を十分吟味する必要があり,その手段としては,反対尋問が有効であることから,被告人には,反対尋問権が保証されている(憲法37U前段)が,伝聞証拠については,反対尋問による供述の正確性の吟味が出来ず(反対尋問権の確保),また,A供述の正確性をテストする上では,直接主義の要請も重要であるが,伝聞証拠ではこの要請も満たすことが出来ない(直接主義)からである。

1 伝聞法則の不適用
@ 言葉が要証事実となっている場合
A 行為の言語的部分
B 情況証拠
(C 328条)

2 伝聞法則の例外

(1)直接主義に反するだけの場合
(既にある程度の反対尋問のテストを受け,またはその機会を与えられた供述を内容とする書面,もしくは,反対尋問を考えることが無意味な供述を内容とする書面)

ア 被告人以外の者の公判準備または 公判期日における供述を録取した書面 (321U前段)
イ 裁判所又は裁判官の検証調書(32 1U後段)
ウ 被告人の供述を内容とする書面
 @ 被告人の供述書および供述録取書(322T)
 A 被告人の公判準備又は公判期日における供述録取書(322U)

(2)内容の性質上公判廷で反対尋問のテストを行うことが極めて困難な場合
ア 捜査機関の検証調書(321V)
イ 鑑定の経過および結果を記載した書面で鑑定人の作成したもの(321W)

(3)伝聞証拠であるが,反対尋問の吟味に代替しうる程の信用性の情況的保証があり且つ伝聞証拠を用いる必要性がある場合
ア 書面自体に先の要件が揃っているも の(323)
 @ 公務員の証明文書(@)
 A 業務文書(A)
 B その他特に信用すべき状況の下に作成された文書(B)
イ 先の要件を具体的に組み合わせたもの:上記の文書以外で被告人以外のものが作成した供述書又は供述録取書(321T)
 @ 裁判官の面前における供述録取書
 A 検察官の面前における供述録取書
 B その他の供述録取書及び供述書

(4)反対当事者が反対尋問権を放棄した場合
ア 証拠とすることの同意(326)
イ 合意書面(327)

((5)証明力を争う証拠)※自己矛盾供述に限るものと解すれば,伝聞不適用の場合の一つであると解しうる。
(328)
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