法律

□刑法雑記帳
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《強盗罪における暴行》(大コメ(12)332頁)

1 総説
 暴行・脅迫が被害者の犯行を抑圧するに足る程度のものであることを要し,その判断は,客観的基準によるべきである(最判昭24.2.8刑集3-2-75)。
 暴行・脅迫によって,いかなる場合にも犯行を抑圧しうること,又は,現実的に犯行を抑圧したことは必要ではない(最判昭23.6.26刑集2-7-748,広島高判昭26.1.13特報20-1)。
 犯行抑圧程度の暴行・脅迫があれば,それと財物奪取との間に因果関係のある限り,被害者が単に畏怖したに止まったとしても,また,自ら財物を交付したとしても,恐喝罪ではなく,強盗罪が成立する(最判昭24.2.8刑集3-2-75)。

2 一般論
@現実に刃物のような凶器をちらつかせていれば,それが暴行か脅迫かは別として,犯行の抑圧程度の暴行脅迫があったとすべきである(大コメ(12)334頁)。

※判例
@最判昭24.5.19刑集2-11-1360

A大阪高判平9.8.28判時1626-153
 通行人の顔面を一回殴打すれば,鞄を奪うことができると思い殴打後は積極的に暴行を加えておらず,被害者に直ちに組み伏せられたとして,未だ被害者の犯行を抑圧するに足る程度に至っていなかったものとした。

3 事後強盗の例
 本罪における暴行・脅迫は,相手方の犯行を抑圧するに足るものでなければならない(大判昭7.6.9刑集11-778)。
 消極判例としては次のようなものがある。

@京都地判昭53.1.24判時894-129
 窃盗犯人が追跡してきた者の顔面,頭部を数回殴打した事案について,白昼公道での犯行であり,通行人らが窃盗犯人の逃走を妨害している状況にあり,被害者の年齢,性別及び現に逮捕意思を制圧されていなかったことなど諸般の事情を考慮すれば,右の暴行は未だ被害者の犯行を抑圧するに足るものとは言えない。

A福岡地判昭62.2.9判時1233-157
 窃盗犯人がこれを追跡してきた者の襟元付近をつかんで押し返すなどの暴行を加えた事案について,現場が交通量の多いところで,右暴行時にはまわりに人だかりができており,しかも被害者が過去に6回も万引き犯人を逮捕した経験のある者で空手の修行を積んでいたことなどから,右の暴行は未だ被害者の犯行を抑圧するに足るものとはいえないとした。

B浦和地判平2.12.20判時1377-145
 追いかけた2名の顔面を手けんで殴打するなどの暴行を加えた事案について,犯行を抑圧する程度に至っていないとした。
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