法律

□刑法雑記帳
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放火罪と失火罪(3)

第3 失火罪

1 失火罪(刑116)

T 失火により,第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は,50万円以下の罰金に処する。
U 失火により,第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し,よって公共の危険を生じさせた者も,前項と同様とする。

「失火」
→過失によって出火せしめることをいう。

2 業務上失火罪(刑117の2)

第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき,又は重大な過失によるときは,3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。

「業務」
→職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位にあることをいう(最決昭60.10.21刑集39-6-362)。
※業務者の例
→ボイラーマン,調理師,火災を生じる可能性のある物を販売する者,防火を主たる仕事をする夜警,ホテルやデパートの防火責任者。
 なお,如何に反復継続して火気を扱っていても,主婦は入らない。

「重大な過失」
注意義務違反の程度が著しいことをいう
 例えば,盛夏晴天の日に,給油所内のガソリン缶から45から60cmの個所でライターに点火した者には,重大な過失が認められる(最判昭23.6.8裁集2-329)。
   
第4 消火妨害罪(刑114)

火災の際に,消火用の物を隠匿し,若しくは損壊し,又はその他の方法により,消火を妨害した者は,1年以上10年以下の懲役に処する。

「火災の際」
→現に火災がある場合の他,まさに火災となろうとしている場合も含まれる。

「火災」
→社会通念上火災と認められる程度のものであることを要する。
 単に物が燃焼を始めただけで容易に消し止めうる段階では,まだ,火災があるとは言えない。
 火災の原因は,放火,失火,その他の偶然の原因であるとを問わない。

「消火を妨害」
→消火活動を妨げることをいい,その方法には制限がない。

第5 激発物破裂罪(117)

T 火薬,ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて,第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を損壊した者は,放火の例による。第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を損壊し,よって公共の危険を生じさせた者も,同様とする。
U 前項の行為が過失によるときは,失火の例による。

「激発すべき物」
→急激に破裂して,物を粉砕する力を有する物をいう。
 火薬,ボイラーはその例示である。

※爆発物取締罰則1条以下にいう「爆発物」も激発すべき物の一種であり,爆発物を利用して財物を損壊し,公共の危険を発生させた場合は,本罪と爆発物使用罪(爆発物取締罰則1条)の観念的競合となる(大判大11.3.31刑集1-186)。

※業務者が本罪の罪を犯し,または,重過失によって本罪の罪を犯した場合も処罰される(刑117−2)。

第6 ガス漏出等及び同致死罪(刑118)

T ガス,電気又は蒸気を漏出させ,流出させ,又は遮断し,よって人の生命,身体又は財産に危険を生じさせた者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
U ガス,電気又は蒸気を漏出させ,流出させ,又は遮断し,よって人を死傷させた者は,傷害の罪(※10年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料)と比較して,重い刑により処断する。

「人」
→行為者以外の他人を意味し,特定人でもよい。

※危険の発生の認識の要否については,争いがある。
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