法律

□刑法雑記帳
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放火罪と失火罪(2)

3 非現住建造物等放火罪(刑109)

T 放火して,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない建造物,艦船又は鉱坑を焼損した者は,2年以上の有期懲役に処する。
U 前項の物が自己の所有に係るときは,6月以上7年以下の懲役に処する。ただし,公共の危険を生じなかったときは,罰しない。

(1)本罪が適用される場合
建造物等の放火であって,現在性・現住性のいずれも欠く場合をいう。
(2)人
→犯人以外の人のこと。
家人を皆殺しにした後,死体の置かれた家を燃やす行為は非現住建造物の放火ということになる(大判大6.4.3刑録23-312)。
(3)客体
108と違い客体は,建造物,艦船,鉱坑に限られ,汽車,電車は含まれない。
(4)自己所有物に放火
→公共の危険の発生が要件となる。

※刑108,109T放火罪は,
@未遂罪が成立
A予備罪が成立
B国民の国外犯が処罰
C抽象的危険犯

4 建造物等以外放火罪(刑110)

T 放火して,前2条に規定する物以外の物を焼損し,よって公共の危険を生じさせた者は,1年以上10年以下の懲役に処する。
U 前項の物が自己の所有に係るときは,1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

(1)本罪が認められる場合
 刑108,109以外の客体への放火を罰するもの。
(2)自己所有物に放火した場合は,処罰が軽くなる。

5 延焼罪(刑111)

T 第109条第2項又は前条第2項の罪を犯し,よって第108条又は第109条第1項に規定する物に延焼させたときは,3月以上10年以下の懲役に処する。
U 前条第2項の罪を犯し,よって同条第1項に規定する物に延焼させたときは,3年以下の懲役に処する。

(1)罪質
109U,110Uの結果的加重犯規定。
※109T又は110Tの客体を焼損して,108の客体を焼損したときは,延焼罪の規定のない以上,109T又は110T本来の規定の範囲内で処断することになる。

6 その他

(1)被害者の承諾
公共危険犯→被害者(家等の持ち主等)が承諾しても一応成立
(重要なのは,家等を燃やされた人以外に周りの人が迷惑するということ)
但し,財産犯的な性格も持つので,軽い形態の罪になることも

刑108・住居者,現在者が承諾
→刑109

目的物の所有者が承諾
→刑109U,110U

(2)自己所有物放火の特例

115 第109条第1項及び第110条第1項に規定する物が自己の所有に係るものであっても,差押えを受け,物権を負担し,賃貸し,又は保険に付したものである場合において,これを焼損したときは,他人の物を焼損した者の例による。

(3)罪数関数
@1個の放火行為で数個の物件を焼損した
→1個の放火罪
A1個の放火行為で処罰規定を異にする数個の物件を焼損した
→もっとも重い処罰規定に該当する目的物を焼損した罪で処罰する。
B現住建造物を放火する目的で隣接する非現住建造物に放火
→現住建造物等放火未遂罪が成立
C 建物内の住人を殺害する目的で放火した場合は,現住建造物放火罪と殺人罪の観念的競合となると解されている。
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