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□教えて!クラトス先生
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「えええ!補習だって!?クラトス先生と?」


いきなりの大声にクラスメイトの視線が集まる。もう下校時間でそれ程生徒は残っていないが。



「声でけぇよゼロス。」


「いいなーいいなー俺様羨ましいー!」


紅い髪を振り乱しゼロスは駄々っ子みたいに口を尖らせた。一方ロイドははあ?と怪訝な顔で、



「あーのーな。補習のどこが羨ましいんだよ。厭味か!」


「うんにゃ。素で羨ましいよ。だってあのクラトス先生とだろ〜くぅ〜」


「……あのな」



ロイドは半眼でゼロスを睨む。


「母さんを変な眼で見るな」


「お、出たよ。ロイド君のマザコンが」


「誰がマザコン…ておわ!やべえ!」



時計を見てロイドは慌てた。



「もうこんな時間かよーアホゼロス!行かなきゃ何言われるかわかんねー」


「ほいほい。頑張って来なさいよ〜」


ひらひらと手を振るゼロスを無視してロイドは教室を飛び出した。







「…遅い」


「…スミマセン」



慌ててクラトスの待つ教室に行ったものの5分程遅刻していて。開口一番お叱りの言葉を受けていた。



「時間厳守だ、分かったな?」


「でも母さんゼロスの奴が」


「…ここでは先生と呼びなさい。」


「…はい」


「それと人のせいにするのもやめなさい。」


「…はい」



しゅん、とうなだれるロイドを見てクラトスは溜息を吐いた。



「よろしい。席に着きなさい」





何が楽しいんだよやっぱわかんねーよゼロス。



大好きな母から出る言葉は大嫌いな数学の公式と厳しい叱咤ばかり。



ロイドは盛大に溜息を吐いた。



「…ロイド。」


「…え?おわあ!」



すぐ間近にクラトスの顔が有り焦ってロイドは椅子から落ちそうになった。



「…その様子では聞いてなかったようだな。」


「…う、スミマセン」


クラトスは額に手を当てていたがやがて、躊躇いがちに口にした。



「…何か悩みでもあるのか?ここには今私とお前しかいない、言ってみなさい」

「悩みって…」



そう言われても。目の前の美しい母の事しか頭にないロイドは言い淀んだ。これではゼロスの言うとおりたいしたマザコンだ。



「別になんも…」


「では何故補習をきちんと受けない?数学が嫌いで乗り気でないのは分かるが、後で困るのはロイド、お前なんだぞ」



「……」



眉を下げ本気で心配するクラトス。こんな顔させたかった訳じゃないのに。出来の悪い子供でごめん。クラトスは何でも出来るのに。思考がいつになくマイナスなのは母を悲しませてるからなのか。酷く自分に苛立ち、そして形容し難い感情は涙となって零れ落ちた。


「ロ、ロイド!?」



いきなり泣き出した息子にクラトスはかなり慌てる。


「ごめ、かあさん、俺…」

しゃくり上げながら何とか弁明しようとするが上手く行かない。嗚呼ますます嫌われる――漠然とそう思ったとき。



ふわり。



柔らかい感触。ロイドはクラトスの胸に抱きしめられていた。



「な、ななな」



思わず顔を真っ赤にするロイド。今までのマイナス思考等吹き飛び、羞恥と喜びが頭を支配する。



うわーうわークラトスの胸柔らかいでかい!いい匂いじゃなくて俺…俺…



「うわー!」


ロイドは慌ててクラトスの腕を振りほどくと教室から飛び出していった。



「ロイド!」



クラトスは後を追おうと教室を出た。そのパンプスを履いた足元が影に止められた。



「やめときな」


「…ゼロス」


「今はそっとしときましょーよ」


行き先トイレだから。そう心で呟いたゼロスの前で頼りなさ気にクラトスが呟いた。



「…私は教師だけでなく母親としても失格だな…あの子の事が解らなくなるなんて」


「失格、なんてことはないでしょーよ。親子だから、わかんなくなる事だってあるかも知れない。解る努力…あー俺様らしくないか。すればいんじゃね?」


ゼロスの言葉にクラトスは一瞬目を丸くしたがすぐに微笑んだ。ゼロスすら見惚れる美貌だった。



「そうか、そうだな…有り難うゼロス。」


数学の公式のように答えが決まっていないものだな。厄介だが。



そうひとりごちて、クラトスは教室に踵を返した。


「ゼロス」


「ん、なあに?先生」


「時々でいいからあの子…ロイドの勉強見てやって欲しい…」


「いいよ。お安い御用だ。」


「すまないな」


ゼロスは愛しいハニーの為ですから〜とでひゃひゃひゃと豪快に笑ってみせた。


ロイド君には悪いけど、愛しのハニーを射止める為ダシになって貰おうと。



ゼロスの黒い笑いに気付かずクラトスは一先ず胸を撫で下ろすのだった。






おわれ




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