TOS+その他
□ごめんもう笑えない
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「脱ぎなよ」
夜の戸張に冷たい声が響く。戸惑いと羞恥がそれに応えた。
「何今更恥ずかしがってんの」
そうだ全て今更だ。
しかし動かないクラトスに業を煮やしたゼロスは彼女の細い手首を乱暴に引き寄せた。
「やっ…」
「だから。今更だろ」
冷たく突き放すように言えば、クラトスは切ない顔でゼロスを見上げた。大きな瞳に涙が溜まっている。
それでもゼロスは彼女に優しい言葉ひとつかけなかった。無言でクラトスの上衣の前に手をかける。夜目にも白い乳房が揺れて現れ、ゼロスは目を細めた。
「…っゼロス!」
「煩い。」
些か乱暴にゼロスは白い柔肌を掴む。
「…いたっ」
クラトスは短く悲鳴を上げる。縋るように見上げた顔はしかし、酷薄な笑みを刻むだけだった。
―――どうして。
「ひっ、あっ、嫌あっ」
乱雑に突き上げられて、見開かれたクラトスの瞳からぽろぽろと涙が零れる。
酷い抱き方をしていると、我ながら思う。だが止めようがない。
熱に浮かされたように、助けを乞うようにクラトスは息子の名を呼び続けた。
「あっ、あぁっ…ロイド、ろい、ど」
――助けて。
「あんたにそんな資格があるとでも?」
息子を裏切り、仲間を裏切ったあんたが。助けを求められるとでも思ってんの。
辛辣にそう言い放つ。クラトスは嗚咽を漏らした。
嗚呼。何をしているんだ俺は。こんなにこんなに愛しいひとを追い詰めて。
だが止まらない。クラトスを詰り、苛み、彼女が自分だけ見ればいい。憎悪でも構わない。似合いではないか。裏切り者同士としては。
自嘲の笑みを浮かべながらゼロスはクラトスを苛む。その瞳が自分だけ映す様に酷く心揺らぎながら。
嗚呼、俺だけ―――俺だけを見てくれ。クラトス…。
了