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□重なる、 き み
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※き み がいれば の続き
 アッシュ視点








わかっている


本当は、わかっているんだ













「アッシュ、何書いてるんだ?」

不思議そうにルークが手元を覗き込んでくる
最近、ようやく不自由なく喋ることができるようになったルークは、ますます'アイツ'に似てきた
それに最初は満足感を抱いていたが、最近は胸の奥に違和感を感じる
気づかないふりをしても、その違和感は、日に日に増していくような気がして……



「日記だ」

「にっき?」

初めて聞く単語にルークは首を傾げる
その仕草が記憶の中の'アイツ'と重なる
愛おしさを感じながら、'アイツ'より長めの髪に口付けた

「毎日の出来事や思ったことを日記帳に書くんだ」
「へぇー」

興味津々、といったようにペラペラと日記帳をめくるルークを見ながら、'アイツ'の日記帳の存在を思い出す

アイツの日記帳には、誰の目にも触れないように鍵がかかっている
俺が帰ってきた当初ナタリアに、鍵を壊して見ないのか、と問われたことがあった
俺は、その必要はない、と答えた


その日記帳を、
開ける必要すらないのだから



元々、俺には日記を書く習慣はなかった
だが、'アイツ'を受け継ぐ形になった今では、それが日課となっていた

記憶の中の'アイツ'は、夜になると必ず日記をつけている
古い記憶では、同じような毎日のくり返しに倦怠感を抱きながら、粗雑な字でその不満を書き綴っていた

それが、あの日から……特にアクゼリュスの崩落から、大きく変わっていった
過去の自分を恥、自分を変えようと、必死になってもがいて、『ルーク』という存在への苦悩と、うまくいかない事態へのジレンマ……死への恐怖で日記の大半は埋まっていた
時折現れる日記の中での俺の存在は、'アイツ'を苦しめ、悩ませ、…一喜一憂させた
それは俺に対する羨望の表れであった
だが、日が経つにつれて、'アイツ'の日記の中で、俺への羨望の形が少しずつ変わってきた

自分の被験者であることの負い目
自分より能力の高いことへの羨み

様々な感情の中に
いつの日からか
小さな恋心が芽生え始めた
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